イベント レコードのサイズ、イベント速度、イベント量など、リアルタイムのイベント処理の各側面を理解するとともに、ArcGIS Enterprise のさまざまなソフトウェア コンポーネントおよびそれらをサーバー コンピューター上に配置する方法について検討する必要があります。 このトピックでは、エンタープライズ GIS における ArcGIS GeoEvent Server の 2 つの配置パターンについて説明し、配置に関する検討事項をさらに詳しく考察します。
- 単一コンピューターの配置 - ArcGIS GeoEvent Server が同一のコンピューター上に配置される ArcGIS Enterprise の基本配置を実行します。この結果、すべてのコンポーネントが単一コンピューター上に存在することになります。
- 複数台のコンピューターの配置 - ArcGIS Server のインスタンスを ArcGIS Enterprise の基本配置とは別のサーバー コンピューター上に配置した後、ArcGIS GeoEvent Server をそのコンピューター上に配置します。
上記のどちらの配置パターンを選択するにしても、「ArcGIS システムの設計: ベスト プラクティス」ホワイト ペーパーに記載されたサーバー リソースの割り当ておよび作業負荷の分離の原則の理解を考慮に入れる必要があります。 また、各種の ArcGIS Server ライセンス ロールおよび ArcGIS Enterprise のコンポーネント間で信頼を確立するための SSL 証明書の構成方法について十分な知識を得ておくことも重要です。
ArcGIS Enterprise と ArcGIS GeoEvent Server を利用するソリューションの設計およびシステム アーキテクチャでは多数のオプションが用意されています。システム設計者は、組織固有のニーズに応じたシステム アーキテクチャを設計および配置する際に Esri のコンサルティング サービスを利用してアドバイスを受けることができます。
単一コンピューターの配置
単一コンピューターの配置パターンは、ArcGIS GeoEvent Server が同一のコンピューター上に配置される ArcGIS Enterprise の基本配置と言うことができます。 この配置パターンは、運用環境では推奨されないものの、ソリューション開発、概念実証、デモにおいては実用的です。 システム設計者は、この種のソリューションを運用環境に配置する前に、ArcGIS Server と ArcGIS GeoEvent Server 間でのシステム リソース共有の意味を理解する必要があります。 単一コンピューターの配置の一部として GeoEvent Server を配置するには、既存の Enterprise ポータルのホスティング サーバーの下で実行されるように GeoEvent Server をインストールします。
この方法に従う場合、システム設計者は、ArcGIS Server がこの配置パターンで 2 つの異なるサーバー ロールを同時にサポートしていることを理解する必要があります。 一方で、 は、ArcGIS Enterprise の Standard または Advanced ライセンスを使用し、ArcGIS Server は、ArcGIS GIS Server としてライセンスが付与されます。 これにより、Web サービスの公開、ホスト フィーチャ レイヤー、Enterprise ポータルのフェデレーションなど、基本的な Web GIS 機能が使用可能になります。 ArcGIS GIS Server Standard または Advanced ライセンスとともに GeoEvent Server ライセンスが ArcGIS Server に適用される場合、サーバー コンピューターでは、GeoEvent Server で利用可能なリアルタイム解析機能もサポートされます。
この方法では、ソフトウェア コンポーネントの配置とインストールを簡素化できますが、システム設計者は、単一の ArcGIS Server によって複数のタスクに対応していることを認識しておく必要があります。つまり、この単一サーバーですべてのサービス リクエストを処理しなければならないため、CPU や RAM などのシステム リソースが使い果たされて、このサーバーが急速に過負荷状態になる可能性があります。 Enterprise ポータル、ArcGIS Pro、または ArcGIS GeoEvent Manager を使用して公開されたサービスはすべて、ホスト フィーチャ サービスとして公開されます。 レコードが従来のフィーチャ編集ワークフローを使用して管理される、より従来型のフィーチャ サービスと、レコードがリアルタイムの観測データで更新されるリアルタイム サービスが併用されている場合は、GIS Server と GeoEvent Server の間の区別があいまいになる可能性があります。
単一コンピューターの配置では、SSL 証明書の構成が簡素化されています。 システム設計者は CA 署名証明書またはドメイン証明書のいずれかを取得し、その証明書を Web サーバー SSL 証明書として使用できるように Portal for ArcGIS と ArcGIS Server の両方を構成することをお勧めします。 GeoEvent Server は、実行元の ArcGIS Server に問い合わせて、そのサーバーの証明書を独自の証明書ストアに読み込みます。 GeoEvent Server は、実行元の ArcGIS Server が信頼するソフトウェア コンポーネントを信頼します。 GeoEvent Server は、ArcGIS ソリューションのコンポーネントやプロダクトとして自己識別できるソフトウェア コンポーネントまでも自動的に信頼することはありません。 GeoEvent Server が配置されているエンタープライズの環境では事故署名証明書は使用しないことが推奨されます。
複数台のコンピューターの配置
2 つ目の配置パターンである複数台のコンピューターの配置は単一コンピューターの配置を基に構築されています。 ArcGIS Enterprise の同じソフトウェア コンポーネントがすべて単一コンピューター上に配置されます。 その違いは、2 台目のコンピューターが追加され、そのコンピューターに ArcGIS Server の 2 番目のインスタンスがインストールされ、ArcGIS GeoEvent Server が配置されることにあります。 この配置パターンでは、そのリソースがリアルタイム イベントの取り込み、処理、配信専用になっている ArcGIS Server の下で GeoEvent Server が実行されます。
注意:
このコンテキストでは、複数台のコンピューターの配置に、スケーラビリティ、信頼性、および回復力に関する方針をサポートするためのシステムのスケールアウトは含まれません。 これらの方針の詳細については、「スケーラビリティ、信頼性、および復元性に関する方針」をご参照ください。
複数台のコンピューターの配置パターンは GeoEvent Server の基本配置のベスト プラクティスと考えられています。 GeoEvent Server を 2 台目のコンピューター上に配置し、専用の ArcGIS Server インスタンスの下で実行した場合、単一サーバー コンピューターが、ArcGIS Enterprise の基本操作に対して要求されるサーバー リクエストおよび負荷に対応できる範囲まで、作業負荷の分離の原則に対応できるようになります。 センサー データのリアル タイムの取り込みと適合をイベントレコードの処理およびデータ配信と並行して実行すると、多量のリソースが消費されます。 このような理由で、ArcGIS Enterprise をサポートする専用のサーバーにシステム リソースを割り当て、GeoEvent Server をサポートする 2 台目のコンピューターをシステムアーキテクチャに組み込むことを常にお勧めします。
ArcGIS Server のロール
システム アーキテクチャに ArcGIS Server のインスタンスが 2 つある場合は、それぞれのインスタンスがサポートしているロールを十分に理解することが重要です。 複数台のコンピューターの配置では、ArcGIS GIS Server ライセンス (Standard または Advanced) が ArcGIS Enterprise コンピューター上の ArcGIS Server に適用されます。 これにより、GIS Server ロールで Enterprise ポータルをホスティング サーバーとしてサポートすることが可能になります。 2 台目のコンピューター上の ArcGIS Server では、ArcGIS GeoEvent Server ライセンスが使用されます。 この 2 台目のコンピューターのロールは単に GeoEvent Server の配置だけをサポートします。
2 台目のコンピューター上に ArcGIS Server をインストールするときに GeoEvent Server ライセンスを選択してから、GeoEvent Server をインストールするときにそれと同じライセンスをもう一度選択します。 ArcGIS GeoAnalytics Server や ArcGIS Image Server のようないくつかのサーバー ロールが ArcGIS Server セットアップ実行可能ファイルに付属していることにご注意ください。 ただし、GeoEvent Server にはセットアップ実行可能ファイルが別途用意されているため、インストール ワークフローでは、GeoEvent Server ライセンスを 2 回選択する必要があります。
個別の REST サービス ディレクトリ
複数台のコンピューターの配置では、ArcGIS Server のそれぞれのインスタンスが独自の ArcGIS REST Services Directory を維持しています。 GIS Server、つまり、基本の ArcGIS Enterprise コンピューター上の ArcGIS Server にフィーチャ サービスを公開するには、ArcGIS Pro などのアプリケーションを使用します。 このサーバーには、Enterprise ポータルのホスティング サーバーをサポートしている管理されたジオデータベースが存在しています。 フィーチャ サービスは、ArcGIS GeoEvent Manager を使用して基本の GeoEvent Server コンピューターのみに公開できます。これは、その ArcGIS Server で使用できるようにジオデータベースが構成されている場合に限られます。 (GIS Server ではなく) GeoEvent Server としてライセンス付与されているサーバーへのフィーチャ サービスの公開は、GeoEvent Server で利用可能な出力コネクタを使用してフィーチャ レコードを追加/更新できる空のフィーチャ サービスに制限されています。
フェデレーションおよびサービスの公開
システム設計者は、特に GeoEvent Server を実行する ArcGIS Server が Enterprise ポータルとフェデレートされている場合、REST サービス ディレクトリの異なるインスタンスを十分に把握している必要があります。 フェデレーションによって、GeoEvent Server の [デフォルト] として登録されているサーバー接続のタイプが ArcGIS Server タイプの接続から ArcGIS Enterprise タイプの接続に切り替わります。
さらに、サーバーのフェデレーションによって、GeoEvent Server のサービス公開動作も変更されます。 サーバーがフェデレートされ、GeoEvent Server の [デフォルト] のサーバー接続が使用されている場合、フィーチャ サービスは、ホスト フィーチャ レイヤーを作成する Enterprise ポータルのホスティング サーバーに公開されます。 これらのサービスはホスティング サーバーの ArcGIS REST Services Directory で検出可能であり、Enterprise ポータルのコンテンツ マネジャーにリスト表示されます。
GeoEvent Server の実行元である ArcGIS Server が Enterprise ポータルとフェデレートされていない場合、GeoEvent Manager を使用して公開されたフィーチャ サービスは、デフォルトで、Enterprise ポータルのホスティング サーバーではなくローカルの ArcGIS Server に公開されます。 これらのサービスは GeoEvent Server コンピューター上の ArcGIS REST Services Directory で検出可能であり、アイテムがサービスにリンクされるように明示的に作成されて初めて Enterprise ポータルのコンテンツ マネジャーにリスト表示されます。
個別の REST サービス ディレクトリのメリットとデメリット
個別の REST サービス ディレクトリとジオデータベースを維持することにはメリットがあります。 作業負荷の分離の原則が、専用のデータベース サーバー リソースを使用して順守されます。 フィーチャ サービスを、リアルタイム データを含むグループと含まないグループに整理できます。 フィーチャ サービスを使用する GeoEvent Server で入力、出力、またはプロセッサを構成するときに、リアルタイム データと関連付けられたコンテンツ アイテムを見つけることが容易になります。これは、ホスト フィーチャ レイヤー アイテムがリアルタイム フィーチャ サービスの横にリスト表示されないためです。
個別の REST サービス ディレクトリのデメリットは、2 つの異なるジオデータベースを管理および維持しなければならないことにあります。 さらに、管理者は、データとサービスが 2 台の ArcGIS Server コンピューターのうちのどちらかに存在する可能性があることを記憶し、認識しておく必要もあります。
SSL 証明書
複数台のコンピューターの配置では、SSL 証明書を構成するときにさらなる注意が必要です。 単一コンピューターの配置の場合、管理者は、単一の CA 署名証明書またはドメイン証明書を使用して Portal for ArcGIS と ArcGIS Server を構成するだけで十分です。 すべてのソフトウェア コンポーネントが同一のコンピューター上で実行されているため、GeoEvent Server が、Enterprise ポータル (つまり、ホスティング サーバー) から受信したレスポンスを自動的に信頼します。
複数台のコンピューターの配置では、基本の ArcGIS Enterprise コンピューター用に生成された証明書を使用するように Portal for ArcGIS とそのホスティング ArcGIS Server を構成する必要があります。 さらに、ArcGIS Enterprise コンピューターの証明書のバージョンを GeoEvent Server コンピューター上の ArcGIS Server にインポートする必要もあります。 これらのことを実行しない場合、ArcGIS Enterprise コンピューターから返された HTTP リクエストは GeoEvent Server で信頼されないことになります。 信頼されない状態は、Enterprise ポータルへのサーバー接続を検証できない場合によく起こります。 また、信頼が欠如している場合は、Enterprise ポータルのホスティング サーバーで正常に構成および登録された後のビッグ データ ストアを操作しているときにも問題が発生することがあります。
参考資料
ArcGIS の配置に関する詳細および参考資料については、以下の記事をご参照ください。