サーバー ロールを使用して、ArcGIS Enterprise の基本配置の機能とキャパシティを拡張することができます。 オンプレミスまたはクラウドにあるサーバー コンピューターを ArcGIS Enterprise の配置に追加すると、ArcGIS Server のライセンス ロールを最大限に活用できます。
ArcGIS Enterprise の基本配置には以下のコンポーネントがあります。
- Portal for ArcGIS: ポータルとして構成され、ユーザー タイプ、ユーザー タイプ エクステンション、およびアドオン アプリに対してライセンスが割り当てられます。
- ArcGIS Server: ArcGIS GIS Server としてライセンスされ、ホスティング サーバーとして構成されます。
- ArcGIS Data Store: リレーショナル データ ストアおよびタイル キャッシュ データ ストアとして構成されます。
- ArcGIS Web Adaptor の 2 つのインスタンス: 1 つはポータルに構成され、もう 1 つはホスティング サーバーに構成されます。
この構成では、ユーザーはポータル Web サイトから Web GIS リソースにアクセスします。 管理者と公開者は、目的に応じて ArcGIS Server に直接アクセスできます。
ArcGIS GIS Server
ArcGIS Enterprise の基本配置では、ArcGIS GIS Server は、次の 2 つの異なるキャパシティで動作します。
- Web GIS インフラ全体をサポートするホスティング サーバー。
- ジオデータベースなど、ユーザー独自のデータ ソースを参照するサービスを公開できる汎用 GIS Server。
多くの組織では、これらの機能を 2 つの異なる ArcGIS Server サイトに分割して、配置のパフォーマンスを高めています。
この構成では、3 台のコンピューターからなる追加 ArcGIS GIS Server サイトが ArcGIS Enterprise ポータルとフェデレートされます。 この追加サイトは、専用のマッピング機能および視覚化機能をユーザーに提供します。 各サイト内のコンピューターの数は、キャパシティおよび高可用性に対する要件によって決まります。
ArcGIS GIS Server サイト内の各コンピューターは、8 GB 以上のメモリを必要とし、公開されるサービスの数およびそれらの利用パターンによっては、さらに多くのメモリが必要になる可能性があります。
ArcGIS Image Server
ArcGIS Image Server には主な機能が 2 つあります。モザイク データセットからの動的イメージ サービスと、分散処理によるラスター解析です。
動的イメージ サービスのみを使用する場合、専用の ArcGIS Image Server サイトを ArcGIS Enterprise の基本配置に追加する配置パターンをお勧めします。
必要に応じて、追加の ArcGIS Image Server サイトをこの配置パターンにフェデレートすることもできます。
大きいデータセットに対してラスター解析が定期的に実行される配置の場合、動的イメージ サービスに悪影響を与えないよう、ラスター解析および動的イメージ サービスに別々のサイトを使用します。
そのような配置パターンでは、コンピューターごとに 8 GB 以上の RAM が存在する必要があります。
「ラスター解析用の ArcGIS Enterprise の構成および配置」をご参照ください。
注意:
ArcGIS Enterprise 配置の場合、ラスター解析用に割り当てる ArcGIS Image Server サイトは 1 つに限ります。 RAM を増やしたりコンピューターを追加することで、サイトの規模を拡張できます。ArcGIS GeoAnalytics Server
ArcGIS GeoAnalytics Server サイトを ArcGIS Enterprise の基本配置にフェデレートするには、ビッグ データ ストアとして構成された ArcGIS Data Store を追加して、独自のコンピューターにインストールする必要があります。
この配置は、開発とテスト、および高可用性の要件のない実稼働環境に適しています。 GeoAnalytics Server とビッグ データ ストアの最小要件については、「GeoAnalytics Server サイトに関するベスト プラクティス」をご参照ください。
データのサイズと実行する解析の内容によっては、解析の実行速度を上げるために、ビッグ データ ストアと ArcGIS GeoAnalytics Server サイトにコンピューターを追加しなければならない場合があります。 この配置パターンを次の図に示します。
注意:
ArcGIS Enterprise の配置で使用できる GeoAnalytics Server サイトは 1 つだけです。 RAM を増やしたりコンピューターを追加することで、サイトの規模を拡張できます。 GeoAnalytics Server は 1 台のコンピューターまたは 3 台のコンピューターで構成された GeoAnalytics Server サイトに対応しています。 GeoAnalytics Server サイトにコンピューターを追加する方法の詳細については、「GeoAnalytics サイトへのコンピューターの追加」をご参照ください。次の図は、ホスティング サーバーに登録されたビッグ データ ストア用の 3 台のコンピューター (3 台のコンピューターで構成された GeoAnalytics Server サイト) を示しています。
GeoAnalytics Server を使用して構成された入力データ ソースからの良好なネットワーク スループットを保証する必要もあります。 これには、リモート ファイル共有からの良好なスループットを保証することが含まれます。
ArcGIS GeoEvent Server
ArcGIS GeoEvent Server では、固定、モバイル、または IoT (Internet of Things) のセンサー ネットワークからのリアルタイムのイベントベースのデータ ストリームをデータ ソースとして企業の GIS に統合できます。
各配置における ArcGIS GeoEvent Server インスタンスの理想的な数と構成は、使用するデータ ストリーム (イベント速度と各イベントのデータ サイズ) によってまったく異なります。 イベントのデータ サイズに少数のデータ フィールドと 1 つのポイントのみが含まれる場合、ArcGIS GeoEvent Server の 1 つのインスタンスは、1 秒あたり最大 6,000 イベント量のストリームを処理できます。 各イベントに数十のデータ フィールドと多面ポリゴンが含まれる場合、同じハードウェアおよびソフトウェア構成で処理できるのは、1 秒あたり 2,000 イベントのみになります。 イベント処理ワークフローに組み込まれたプロセッサのタイプと数は、毎秒処理できるイベント レコードの数にも影響を与えます。
ヒント:
1 秒間には 1,000 ミリ秒しかありません。 GeoEvent サービスをいくつかのシンプルなプロセッサ (フィールド マッパーやフィールド演算など) で構成する場合、イベント処理のスループットに大きな影響は見られません。 フィールド エンリッチャーなどの高価なプロセッサを使用すると、イベント処理ワークフローに遅延が生じます。 フィールド エンリッチャーを 1 つ使用すると、全体のスループットが 2,000 イベント数/秒から 10 イベント数/秒以下にまで低下する場合があります。
推奨される最小限のセットアップは、1 台以上のコンピューターにインストールおよび構成された ArcGIS Enterprise の基本配置、2 台目のコンピューターに構成された ArcGIS Data Store、3 台目のコンピューターに配置された ArcGIS GeoEvent Server サイトを含むものです。
注意:
3 ノードのビッグ データ ストアを組み込むことで、ArcGIS GeoEvent Server によって処理されるイベント データの高速で大容量の履歴管理が可能になります。 ArcGIS Data Store のリレーショナル データ ストア タイプでは、イベント量が 1 秒あたり 200 イベント未満のデータ ストリームを処理できます。
既存である基本の ArcGIS Enterprise コンピューター上に ArcGIS GeoEvent Server を配置してライセンス認証する、さらに最小化したセットアップもサポートしています。 ただし、システム設計者は、そのようなソリューションを実稼働環境に移行する前に、ArcGIS GIS Server と ArcGIS GeoEvent Server の間でのシステム リソース共有の意味を理解する必要があります。
リアルタイムのセンサー ネットワークに複数のデータ ストリームが含まれ、それぞれが中程度のイベント量と速度である場合、単一コンピューターの ArcGIS GeoEvent Server サイトを複数構成して、それぞれを特定のリアルタイム データ ストリーム専用にします。 次の図は、このような構成を示しています。ここでは 3 つの独立した ArcGIS GeoEvent Server インスタンスがあり、それぞれが独自の ArcGIS Server サイト内にあります。
上の構成は、3 つの独立した ArcGIS GeoEvent Server に加えて、ホスティング サーバーに登録された 3 ノードのビッグ データ ストアを示しています。 このシナリオでは、GeoEvent Server とビッグ データ ストアが同じ比率でスケールアウトされていますが、これは必須ではありません。 たとえば、配置が GeoEvent Server の 3 つのインスタンスと 4 ノードのビッグ データ ストアで構成されていてもかまいません。
注意:
GeoEvent Server サイトに Web アダプターが構成されていません。
センサー データを分散処理する際の負荷分散をサポートするために、サードパーティの技術が使用されることがあります。 ただし、一般的にシステム管理をロード バランサーを介してサポートすることはできません。
ArcGIS Notebook Server
ArcGIS Notebook Server は、ArcGIS Enterprise ポータルと統合した完全なデータ サイエンス プラットフォームです。
ArcGIS Notebook Server ロールにより、ArcGIS Enterprise の配置で ArcGIS Notebooks をホストして実行することができます。 Python プログラミング言語を使用すると、空間解析、データ サイエンスおよび機械学習ワークフローの作成、GIS データおよびコンテンツの管理、ArcGIS Enterprise 管理タスクの自動化を実行できます。
ArcGIS Notebook Server サイトは、構成されてから ArcGIS Enterprise の配置とフェデレートされます。 ArcGIS Web Adaptor のインスタンスが各 ArcGIS Notebook Server サイトに配置されて構成されます。
ArcGIS Notebook Server では、各ノートブック作成者にコンピューター内で区分された独自の作業環境と計算リソースを提供するためにコンテナー (仮想化オペレーティング システム) が使用されます。 これらのコンテナーの割り当てと管理ができるように、ArcGIS Notebook Server は Docker コンテナー ソフトウェアを使用します。 ArcGIS Notebook Server が正常に動作するには、Docker Engine を同じコンピューターにインストールして構成しておく必要があります。 Docker Engine を設定する手順の詳細については、『ArcGIS Notebook Server インストール ガイド』をご参照ください。
多くのノートブック作成者に対応する、または各作成者に、より大きなコンテナー化されたワークスペースを提供するために、複数のコンピューターを ArcGIS Notebook Server サイトに結合できます。
注意:
10.7 では、単一コンピューターのサイトだけがサポートされています。 複数コンピューター サイトは 10.7.1 以降でサポートされています。
ArcGIS Workflow Manager Server
ArcGIS Workflow Manager Server は、組織内でのさまざまな GIS 作業と GIS 以外の作業の実行および管理を自動化し簡素化するスケーラブルなワークフロー管理システムです。 これには、ArcGIS Enterprise ポータルに統合される Web アプリが含まれ、ArcGIS Workflow Manager ユーザー タイプ エクステンションを介してライセンスされます。
ArcGIS Workflow Manager Server サイトは、構成されてから ArcGIS Enterprise の配置とフェデレートされます。 ArcGIS Web Adaptor のインスタンスが ArcGIS Workflow Manager Server サイトに配置されて構成されます。 ArcGIS Workflow Manager Server は、独自のコンピューターまたは同じコンピューター上にホスティング サーバーとしてインストールできます。
ArcGIS Knowledge Server
ArcGIS Knowledge Server ロールにより、ArcGIS Enterprise でナレッジ グラフ レイヤーを使用してエンティティ間のリレーションシップをモデル化できます。
ArcGIS Knowledge Server サイトを ArcGIS Enterprise の基本配置にフェデレートするには、グラフ データ ストアとして構成された ArcGIS Data Store を追加して、独自のコンピューターにインストールする必要もあります。
ナレッジ グラフ レイヤーを対象に実行する解析の複雑さや回数によっては、解析の実行速度を上げるために、ArcGIS Knowledge Server サイトにコンピューターを追加しなければならない場合があります。 この配置パターンを次の図に示します。2 台のコンピューターの ArcGIS Knowledge Server サイトが含まれています。