[ホット スポット分析 (Find Hot Spots)] ツールは、データの空間パターン内に統計的に有意なクラスターが存在するかどうかを判定します。
ワークフロー図
解析での使用 GeoAnalytics ツール
GeoAnalytics ツール を使用した解析は、複数の ArcGIS GeoAnalytics Server コンピューターやコアにまたがる分散型処理を使用して実施されます。GeoAnalytics ツール と ArcGIS Enterprise の標準的なフィーチャ解析ツールは、異なるパラメーターと機能を持ちます。これらの相違点については、「フィーチャ解析ツールの相違点」をご参照ください。
例
ある都市の警察は、凶悪犯罪と失業率の間に何らかの関係性があるかを判断する解析を実施しています。凶悪犯罪の件数が多く、失業率が高い地域にある高校で拡張サマー ジョブ計画を導入する予定です。[ホット スポット分析 (Find Hot Spots)] を使用すると、統計的に有意な犯罪と失業のホットスポットがある地域を検索できます。
ある自然保護担当官は、森林への保護対策が必要な地域に優先順位を設定したり、耐性のある地域を詳しく知るために、樹木の病害を調査しています。[ホット スポット分析 (Find Hot Spots)] ツールを使用すると、病害のある樹木 (ホット スポット) と健康な樹木 (コールド スポット) のクラスターを特定できます。
使用上の注意
入力フィーチャはポイントである必要があります。ポイントは、正方形のグリッド (ビン) 内の集約されたフィーチャによって解析されています。
出力レイヤーには、各フィーチャの統計的有意性、p 値、Z スコアなどの情報を含む追加フィールドがあります。
[ホット スポット分析 (Find Hot Spots)] ツールでは、時間ステップを使用して解析することもできます。各時間ステップは、時間ステップ外のフィーチャとは切り離して解析されます。時間ステップを使用するには、入力データを時間対応にし、任意の時点を時間で表す必要があります。タイム ステップを適用すると、出力フィーチャは START_DATETIME および END_DATETIME フィールドで表した時間間隔になります。
[ホット スポット分析 (Find Hot Spots)] ツールでは、エリア レイヤーが投影座標系になくてはなりません。データが投影座標系になくて、投影座標系を設定していない場合は、正積円筒図法 (WKID 54034) が使用されます。
[現在のマップ範囲を使用] がオンの場合、現在のマップ範囲に表示されるフィーチャだけが解析されます。オフの場合、入力レイヤーのすべての入力フィーチャが、現在のマップ範囲内になくても解析されます。
[ホット スポット分析 (Find Hot Spots)] の詳細
空間パターンは、ランダムであっても一定のクラスターを示します。さらに、人間の目と脳は、パターンが存在しなくても見つけようとする性質があります。したがって、そのようにして得られたデータのパターンは、実際に空間プロセスを経て得られた結果なのか、偶然得られた結果に過ぎないのかを判別するのが困難な場合があります。そのため、研究者とアナリストは、空間パターンを定量化するために [ホット スポット分析 (Find Hot Spots)] (Getis-Ord Gi*) のような統計手法を使用しています。
ツールは、データセットの各フィーチャの Getis-Ord Gi* (発音は「ジー-アイ-スター」) 統計値を計算します。結果として生成される Z スコアと p 値は、高い値または低い値のフィーチャが空間的にどの場所でクラスタリングされるかを示します。各フィーチャは、隣接フィーチャのコンテキスト内で解析されます。高い値を持つフィーチャは興味深いフィーチャではあっても、統計的に有意なホット スポットではない可能性もあります。統計的に有意なホット スポットである場合は、高い値を持つフィーチャが、同じように高い値を持つ別のフィーチャに囲まれています。あるフィーチャとその近傍を対象とする特定エリアの合計値が、すべてのフィーチャの合計値と比例的に比較されます。実際の特定エリアの合計値と期待された合計値が、偶然には発生しないほど大きく異なっていれば、Z スコアは統計的に有意ということになります。
データ内から検出された統計的に有意なクラスターは、有益な情報です。クラスターが発生する位置と時期がわかると、調べているパターンを発展させるプロセスの重要な手掛かりになります。たとえば、空き巣がある特定の近隣地区で一貫して高いという情報は、効果的な防止策を作ったり、貴重な警察のリソースを割り当てたり、地区を監視するプログラムを開始したり、徹底的な犯罪調査の根拠にしたり、参考人を特定したりする必要がある場合に重要な情報になります。
ポイント フィーチャ解析
ポイント フィーチャとして、さまざまなデータが利用できます。ポイントとしてよく表現されるフィーチャとしては、犯罪事件、学校、病院、緊急通報地点、交通事故、井戸、樹木、ボートなどがあります。分析の対象は、各ポイント フィーチャに関連付けられたデータ値 (フィールド) である場合があります。あるいは、ポイント自体のクラスター化の評価だけが対象となる場合もあります。フィールドを指定するかどうかの判断は、質問の内容によって変わります。
ポイント数が多い/少ないクラスターの検索
各ポイントがイベント、インシデント、存在の有無を表すようなポイント データの場合、使用する分析フィールドが明確に存在しません。このような場合、クラスター化が著しく (統計的に有意な程度に) 強い/弱いエリアがわかれば十分です。この分析の場合、エリア フィーチャ (ツールが作成したビンのグリッド) がポイント上に配置され、各エリア内にあるポイント数がカウントされます。続いて、各エリア フィーチャに関連するポイント数の多いクラスターと少ないクラスターが検索されます。
結果の解析
[ホット スポット分析 (Find Hot Spots)] ツールの出力はマップです。結果レイヤー マップのポイントまたはエリアで、赤色または青色が暗く表示されるほど、クラスター化の結果が偶然でない可能性が高くなります。一方、ベージュ色のポイントまたはエリアは、統計的に有意なクラスターではありません。これらのフィーチャと関連付けられた空間パターンは、偶然の結果である可能性が高くなります。分析の結果、統計的に有意なクラスターがまったく存在しない場合があります。これは、認識しておくべき重要な情報です。
空間パターンがランダムである場合、結果の原因を特定することができません。この場合、結果レイヤー内のすべてのフィーチャがベージュ色になります。一方、統計的に有意なクラスターが見つかった場合、クラスターが発生した場所は、クラスターの要因についての重要な手掛かりになります。たとえば、特定の環境有害物質に関連付けられたガンの発症に関して、統計的に有意な空間クラスターが見つかった場合、これによって人々の命を守ることを目的とした政策や活動が生まれることもあります。同様に、放課後のスポーツ プログラムを促進している学校と関連付けて、子供の肥満のコールド スポットが見つかった場合、この種のプログラムをより広範に推進していくための強力な根拠にすることができます。
制限事項
入力にはポイント レイヤーが含まれている必要があり、解析前に指定したサイズのビンに集約されます。集約せずにホット スポット分析を行う場合や、入力がポリゴン レイヤーである場合は、標準のフィーチャ解析ツール [ホット スポット分析 (Find Hot Spots)] を使用します。
ArcGIS API for Python の例
[ホット スポット分析 (Find Hot Spots)] は ArcGIS API for Python で使用できます。
この例では、犯罪タイプが国内である犯罪のホット スポットを探索します。
# Import the required ArcGIS API for Python modules import arcgis from arcgis.gis import GIS from arcgis.geoanalytics import analyze_patterns
# Connect to your ArcGIS Enterprise portal and check that GeoAnalytics is supported portal = GIS("https://myportal.domain.com/portal", "gis_publisher", "my_password", verify_cert=False) if not portal.geoanalytics.is_supported():
print("Quitting, GeoAnalytics is not supported") exit(1)
# Find the big data file share dataset you're interested in using for analysis search_result = portal.content.search("", "Big Data File Share")
# Look through search results for a big data file share with the matching name bd_file = next(x for x in search_result if x.title == "bigDataFileShares_PoliceData")
# Look through the big data file share for Crimes crimes = next(x for x in bd_file.layers if x.properties.name == "Crimes")
# Set the tool environment settings and apply a filter to crimes arcgis.env.verbose = True crimes.filter = "Domestic = 'TRUE'"
# Find hot spot of domestic crime occurrence with hot spot cell size of 1 mile hot_spots_result = analyze_patterns.find_hot_spots(point_layer = crimes, bin_size = 1, bin_size_unit = 'Miles',
neighborhood_distance = 5, neighborhood_distance_unit = 'Miles', output_name = "Crimes_Hotspots")
# Visualize the tool results if you are running Python in a Jupyter Notebook processed_map = portal.map('City, State', 10) processed_map.add_layer(hot_spots_result) processed_map
類似のツール
[ホット スポット分析] ツールは、データの空間パターンに、統計的に有意なクラスターが存在するかどうかを判定します。その他の役に立つツールを紹介します。
Map Viewer解析ツール
標準解析ツールを使用し、エリア内のホット スポット分析を行う方法については、「ホット スポット分析」をご参照ください。
データの空間パターンにおける外れ値を見つける場合は、標準ツールの [Find Outliers (外れ値の検索)] を使用します。
ポイントまたはライン フィーチャの密度マップを作成する場合、GeoAnalytics ツール の [密度の計算 (Calculate Density)] ツール、または標準ツールの [密度の計算 (Calculate Density)] を使用します。
ArcGIS Desktop 解析ツール
GeoAnalytics ツール の [ホット スポット分析 (Find Hot Spots)] は ArcGIS Pro でも利用できます。
[ホット スポット分析 (Find Hot Spots)] ツールは、[ホット スポット分析 (Hot Spot Analysis (Getis-Ord Gi*))] ツールおよび [最適化ホット スポット分析 (Optimized Hot Spot Analysis)] ツールで使用されるのと同じ統計を実行します。