分散コラボレーションを利用した場合、マップ、アプリ、レイヤーといった多くのアイテムを他の組織とシームレスに共有することで、自身の GIS コンテンツの範囲を拡大することができます。 分散コラボレーション (または単に「コラボレーション」) は、参加する組織間の信頼関係を基礎とし、データ アクセスと共有を支持する共通の目標とイニシアティブによって促進されます。 コラボレーションは多数のワークフローで役立ちます。たとえば、ArcGIS Online を介して ArcGIS Enterprise コンテンツを一般ユーザーに公開したり、組織内のそれぞれの部門を超えてデータを視覚化したり、フィールド データの収集を管理したりする際に便利です。 コラボレーションに単一のパターンは存在しないため、ユーザーのニーズに最も適した方法でコラボレーションを実施することができます。
パターン例
分散コラボレーションには、ArcGIS Enterprise や ArcGIS Online、あるいはそれらの組み合わせなど、さまざまなパターンがあります。 組織のニーズに合わせて分散コラボレーションを使用する方法を考える際には、一般的な 2 つのパターンを検討してください。
- 2 つのポータル間のコラボレーション
- 1 つの主管ポータルと複数のポータルとのコラボレーション
使用例
以下に示す各シナリオは、個々の組織にとって最も妥当な構成に応じ、ArcGIS Enterprise 対 ArcGIS Enterprise、あるいは ArcGIS Enterprise 対 ArcGIS Online のコラボレーションを使って実装できることを覚えておいてください。 なお、ArcGIS Enterprise と ArcGIS Online のコラボレーションでは、ArcGIS Online がホストでなければなりません。
組織のニーズを検討する際には、ArcGIS Online と、ArcGIS Enterprise Windows、Linux、および Kubernetes のデプロイメント間のコラボレーションで次の事柄がサポートされていることに留意してください。
コラボレーションのホスト | コラボレーションのゲスト |
---|---|
ArcGIS Online | ArcGIS Enterprise (Windows) | ArcGIS Enterprise (Linux) | ArcGIS Enterprise (Kubernetes) |
ArcGIS Enterprise (*Windows) | ArcGIS Enterprise (Windows) | ArcGIS Enterprise (Linux) | ArcGIS Enterprise (Kubernetes) |
ArcGIS Enterprise (*Linux) | ArcGIS Enterprise (Windows) | ArcGIS Enterprise (Linux) | ArcGIS Enterprise (Kubernetes) |
ArcGIS Enterprise (*Kubernetes) | ArcGIS Enterprise (Kubernetes) | ArcGIS Enterprise (Windows) | ArcGIS Enterprise (Linux) |
コラボレーション参加者のホストとゲストの詳細については、「コラボレーションに関する主要概念」をご参照ください。
シナリオ: 2 つのポータル間のコラボレーション
たった 2 つのポータル間でもコラボレーションは可能です。 ここでは例として、企画部門と地域開発部門とのコラボレーションを考えてみましょう。 両部門は複合開発の場で、密に連携し、コンテンツを共有することができます。
この例では、次のいくつかの注意すべき事項があります。
- このコラボレーションに関与するいずれの部門でも、それぞれが独自の ArcGIS Enterprise 配置を使用しています。
- コラボレーションを開始するのは、どちらの部門でもかまいません。開始した側がホストになります。
- このシナリオでは両部門が、参照されたレイヤーを、ArcGIS Enterprise ポータル全体にわたって共有します。
シナリオ: 1 つの主管ポータルと複数のエンタープライズ ポータルとのコラボレーション
別のシナリオを検討してみましょう。ある中規模都市では、ArcGIS Enterprise ポータルを構築して、現地の警察庁、消防庁、レクリエーション部門、運輸部門が関与する複数のプロジェクト用に信頼性のあるデータを管理しています。 市では、各部門からデータを受け取り、運用情報を追跡したいと考えています。
この例では、次のいくつかの注意すべき事項があります。
- 都市とこのコラボレーションに参加する各部門では、それぞれが独自の ArcGIS Enterprise 配置を使用しています。
- コラボレーションを開始した側である、市がホストになります。 したがって、コラボレーションに参加した各部門はゲストです。
- 市と各部門の両者は、フィーチャ レイヤーのデータをコピーとして送受信する、計画同期の間隔について合意しています。 両者とも、設定された間隔に基づき、データの更新時期を予測できることになります。
注意:
ArcGIS Enterprise 対 ArcGIS Enterprise のコラボレーションについて詳しくは、「ArcGIS Enterprise 対 ArcGIS Enterprise のコラボレーションのセットアップ」をご参照ください。
シナリオ: 1 つの主管 ArcGIS Online 組織と複数のエンタープライズ ポータルとのコラボレーション
ある中規模都市の公共事業部門は、落書き、犯罪、公共設備の問題 (水漏れなど) の監視と報告を目的として、公安部門および地域住民とコラボレーションしています。 この活動では、各グループが協力し合いながら、発生した事態を見つけて報告し、データにパターンが存在するかどうかを確認し、必要に応じて適切なリソースを増やすこともあります。
この例では、次のいくつかの注意すべき事項があります。
- このパターンでは、地域住民は 1 つの ArcGIS Online 組織を介して分散コラボレーションに参加しており、都市の各部門は ArcGIS Enterprise ポータルを介して参加しています。
- 公共事業部門が所有している ArcGIS Online 組織がコラボレーションを開始しました。したがってここがホストです。 公安部門がコラボレーション参加者の 1 つになりました。
- 地域住民は、公共事業部門と公安部門の両方に対してリアルタイムで共有コンテンツを送受信します。
- 公共事業部門は、事態を入力できるモバイル アプリを地域住民に提供しており、ダッシュボード アプリを使って所内で活動を追跡して対処します。
- 公安部門は、活動が報告された時点で更新情報を受信します。
注意:
ArcGIS Enterprise 対 ArcGIS Online のコラボレーションについて詳しくは、「ArcGIS Enterprise 対 ArcGIS Online のコラボレーションのセットアップ」をご参照ください。
シナリオ: モバイル作業者がオフラインでのデータ収集を実行している ArcGIS Enterprise および ArcGIS Online 組織間のコラボレーション
ある独立系の石油/天然ガス探査および生産会社が、サイトの適合性プロジェクトに役立つ信頼できるデータを管理する ArcGIS Enterprise 組織サイトを作成しています。 この企業のモバイル作業者は、ArcGIS Online で ArcGIS Field Maps モバイル アプリケーションを使用して適地を特定します。 この企業は、ArcGIS Online で信頼できる最新のサイト適合性データをモバイル作業者と共有し、現場で収集したデータを ArcGIS Enterprise に再び共有することを考えています。
この例では、次のいくつかの注意すべき事項があります。
- この企業は ArcGIS Enterprise の 10.9 以降のバージョンを使用して、双方向編集を有効化しています。
- モバイル作業者は ArcGIS Field Maps を使用する際に ArcGIS Online で認証しています。
- ArcGIS Online はコラボレーションのホストです。
- ArcGIS Enterprise はコラボレーションのゲストです。 ホスト (ArcGIS Online) は、ゲスト (ArcGIS Enterprise) にコラボレーション ワークスペースへの [送受信] アクセスを許可しています。
- ArcGIS Enterprise から信頼できるフィーチャ レイヤーをコピーとして ArcGIS Online に共有しています。 レイヤーは、双方向編集の共有をサポートするように構成されています。
- モバイル作業者は共有フィーチャ レイヤーをダウンロードし、ArcGIS Field Maps モバイル アプリケーションを使用してオフラインで現場に持ち運びます。 現場では、データの収集や既存サイトの点検を行います。 データの収集が完了すると、更新は ArcGIS Online のフィーチャ レイヤーに同期されます。
- 次回スケジュールされているコラボレーション ワークスペースの同期で、モバイル作業者が収集した更新が ArcGIS Enterprise に共有されます。
注意:
上記の例は、コラボレーションで双方向編集を活用する方法の 1 つに過ぎません。 双方向編集は、ArcGIS Enterprise 対 ArcGIS Enterprise のコラボレーションや、複数の参加者とのコラボレーションで共有することができ、共有データを編集する際に、ArcGIS Field Maps アプリケーションや他のモバイル アプリケーションを使用する必要はありません。
ArcGIS Enterprise 対 ArcGIS Online のコラボレーションについて詳しくは、「ArcGIS Enterprise 対 ArcGIS Online のコラボレーションのセットアップ」をご参照ください。 フィーチャ サービスの編集を双方向に共有する方法の詳細については、「コラボレーション グループでのコンテンツの共有」をご参照ください。
コラボレーションの使用
コンテンツを他の共同作業者と共有するには、コラボレーションのワークスペースと関連付けられたグループとそのコンテンツを共有します。 アイテムが別の組織から受信された場合、それらのアイテムには、分散コラボレーションを介して別のポータルから受信されたことを示す青色のコラボレーションのバッジが表示されます。 組織が分散コラボレーションに参加している場合、および適切な権限を持っている場合、Map Viewer、Scene Viewer、グループ ページ、コンテンツ ページでコラボレーション フィルター オプションを使用して、コラボレーション参加者またはコラボレーション自体のいずれかによって、結果をフィルター処理することができます。 コラボレーションとのコンテンツの共有の詳細については、「コラボレーション グループ間でのコンテンツの共有」をご参照ください。
注意:
コラボレーションのバッジは、アイテムの作成元のポータル内のアイテムには表示されません。