データ ストア構成ウィザードを使用すると、大半の ArcGIS Data Store タイプを作成し、ArcGIS Enterprise ポータルのホスティング サーバーとして機能する GIS Server サイトに結合することができます。
Web ブラウザーにアクセスできない場合、またはクラスター モードでタイル キャッシュ データ ストアを配置する必要がある場合は、データ ストア構成ウィザードを使用するのではなく、ArcGIS Data Store がインストールされているコンピューター上で configuredatastore ユーティリティを実行します。
データ ストアを作成する前の考慮事項
データ ストアを作成する前に、以下の点に注意してください。
ディスク容量とメモリ
データ ストアを作成するコンピューターに必要なディスク容量とメモリを検討します。
データ ストアが大量のディスク容量を使用する場合の例を以下に示します。
- リレーショナル データ ストアは、数千のホスト フィーチャ レイヤーのデータを格納できますが、これは数ギガバイトのディスク領域を占有する可能性があります。
- 3D データのキャッシュは、シーン レイヤーに含まれるエリアやデータの複雑さに応じて、数ギガバイトから数テラバイトになります。
- ストリーム レイヤーから継続的に届くデータをアーカイブしたり、多数の現場作業員の位置を追跡したりすると、ビッグ データ ストアは急速に空きが減っていきます。
- キャッシュされたクエリ応答を活用し、フィーチャ レイヤーの描画パフォーマンスを向上させるには、キャッシュがオブジェクト ストア内で可能な限り長く保持される必要があります。 これにより、オブジェクト ストア上のディスク容量がすぐにいっぱいになることがあります。 長期間にわたるクエリ応答キャッシュの格納を容易にするには、単一コンピューターをオブジェクト ストアに使用し、単一コンピューターに大量の空きディスク容量が含まれていることを確認します。 必要なディスク容量は、キャッシュを有効化しているレイヤーの数、それらのレイヤー上で行われる一意のクエリの数、クエリの保持期間によって異なります (オブジェクト ストアのクラスターを使用しても、大量の空きディスク容量がある単一コンピューターを使用した場合に比べて描画パフォーマンスが向上することは示されていません)。
いずれにしても、データ ストア コンピューターを監視し、必要に応じてディスク容量を追加することが重要です。
また、コンピューターに利用可能なメモリが十分にあることを確認する必要もあります。 たとえば、ビッグ データ ストアは最初の構成時に、コンピューター上の空きメモリ領域の約 50 パーセントを消費します。 リレーショナル データ ストアもデータを処理するために十分なメモリを事前に割り当てます。 ホスト フィーチャ レイヤーとホスト シーン レイヤーの大容量のトラフィックも、大量のメモリを消費する可能性があります。 ナレッジ グラフは、エンティティ間のリレーションシップをモデル化する複雑なレイヤーです。 これらのリレーションシップをトラバースして解析するプロセスは、メモリを大量に消費します。
このため、Esri は、ビッグ データ ストア、オブジェクト ストア、およびグラフ ストアを他のデータ ストアとは別のコンピューター上で構成することを推奨します。 Esri は、可能な場合は、リレーショナル データ ストアとタイル キャッシュ データ ストアも別々のコンピューター上に構成することを推奨します。 複数タイプのデータ ストアを同じコンピューター上に構成する場合は、メモリとディスク容量が十分にある堅牢なコンピューターを使用します。
いずれにしても、ディスクやメモリの容量に関するメッセージがないか、データ ストアのログを監視してください。 いずれかのリソースが不足すると、データ ストアは機能を停止してしまいます。
各タイプのデータ ストアを作成するのに最低限必要なディスク容量およびメモリ容量に加えて、それぞれに格納されるデータまたはキャッシュの推定サイズ、および各コンピューター上で実行されるプロセスの詳細については、「ArcGIS Data Store のシステム要件」をご参照ください。
複数の NIC カードまたは DNS エントリ
複数の NIC (ネットワーク インターフェイス コントローラー) カードまたは複数の DNS エントリ (レコードとも呼ばれる) を搭載したコンピューターに ArcGIS Data Store をインストールした場合、データ ストアがネットワーク通信に使う IP アドレスおよびホスト名を指定します。 コンピューター上にデータ ストアを作成する前に、ネットワーク上の他のコンピューターが ArcGIS Data Store と通信するための IP アドレスを決め、ArcGIS Data Store hostidentifier.properties ファイルにその設定記述を追加してください。
- 使用する IP アドレスを決めます。 同じネットワーク上の他のコンピューターで、コマンド プロンプトを開き、ArcGIS Data Store コンピューターに ping します。
- ArcGIS Data Store をインストールしたコンピューターにサイン インし、テキスト エディターで hostidentifier.properties を開きます。
ArcGIS Data Store のインストール時と同じログイン アカウントを使用します。
ファイルは、ArcGIS Data Store インストール ディレクトリの framework\etc 配下にインストールされます。 デフォルトの場所は /home/ags/arcgis/datastore/framework/etc です。
- hostidentifier プロパティからコメント記号 (#) を削除して、データ ストアがネットワーク通信に使用する NIC カードまたは DNS エントリの IP アドレスにそのプロパティを設定します。
この例では、コンピューターとの通信に使う IP アドレスは 12.34.56.789 です。
hostidentifier=12.34.56.789
- hostidentifier.properties ファイルを保存して閉じます。
- このコンピューター上で ArcGIS Data Store サービスを再起動します。
必要に応じて、手順に従って複数の NIC カードまたは DNS エントリを搭載したコンピューターのその他の ArcGIS Enterprise ソフトウェア コンポーネントを構成します。
ホスティング サーバー
ArcGIS Enterprise 配置には、ホスティング サーバーとして働く 1 つの GIS Server サイトがあります。 ホスティング サーバーには少なくとも、ArcGIS Data Store を通して作成したリレーショナル データ ストアを構成する必要があります。 このリレーショナル データ ストアは、ファイルを組織サイトに追加してフィーチャ レイヤーを公開するとき、およびホスト フィーチャ レイヤーを ArcGIS Pro から公開するときに作成された、ホスト フィーチャ レイヤーによって使用されるデータを保持します。 ポータル ユーザーは、カンマ区切り値 (CSV) ファイルを直接マップに追加することもできます。
データ ストア構成ウィザードを使用したデータ ストアの作成
インストール ウィザードを実行すると、データ ストア構成ウィザードがデフォルトの Web ブラウザーで自動的に開きます。 あるいは、コンピューターのショートカット メニューまたはブラウザーに URL を入力してウィザードを開くことができます。 [データ ストア構成ウィザード] の URL の形式は、https://datastoremachine.domain.com:2443/arcgis/datastore です。
- ポータルのホスティング サーバーとして使用される ArcGIS GIS Server サイトのコンピューターの完全修飾ドメイン名を指定します。
gisserver.domain.com の形式でコンピューターを入力します。 複数コンピューターのサイトが存在する場合、GIS Server サイトのコンピューターのいずれかの完全修飾ドメイン名を使用できます。
- そのサイトの ArcGIS Server 管理者のユーザー名とパスワードを入力し、[次へ] をクリックします。
ユーザーは、必ず組み込みアカウントでなければなりません。
- このコンピューター上に作成するデータ ストアのタイプを選択して、[次へ] をクリックします。
同じコンピューター上に複数のタイプのデータ ストアを作成できますが、データ ストア間でメモリ リソースが競合し、パフォーマンスが低下する可能性があるため Esri ではお勧めしません。
データ ストア オプションが有効ではない場合、タイプがコンピューターにインストールされていないか、データ ストアのタイプがこのコンピューター上にすでに構成されている可能性があります。
- ArcGIS Data Store コンテンツ ディレクトリの場所を入力します。
このディレクトリには、データ ストアのファイルの他に、リレーショナル データ ストアのバックアップ ディレクトリが含まれています (リレーショナル データ ストアを作成した場合)。
注意:
タイル キャッシュまたはビッグ データ ストアに対して ArcGIS Data Store のディレクトリを指定する場合、ディレクトリ パスにスペースを含めることはできません。
データ ストア ファイルのディレクトリを指定する際に、UNC パスは使用できません。
このディレクトリにはファイル共有を使用しないでください。
ArcGIS Data Store がインストールされているコンピューター上でデータ ストア ファイルを保持します。
- [次へ] をクリックします。
- [構成サマリー] ダイアログ ボックスの情報を確認します。 問題がない場合は、[完了] をクリックします。 変更が必要な場合は、[戻る] をクリックして修正を加えます。
GIS Server サイトに最初に登録したリレーショナル データ ストアがプライマリ コンピューターになります。 ArcGIS Data Store を 2 台目のコンピューターにインストールし、別のリレーショナル データ ストアを作成して同じ GIS Server サイトに登録する場合、このデータ ストアがスタンバイ コンピューターになります。 これは、プライマリ-スタンバイ モードで実行されているタイル キャッシュ データ ストア、およびグラフ ストアにも当てはまります。
設定が正常に完了すると、データ ストア コンピューターが作成されます。
設定のエラーが見つかった場合は、[構成サマリー] ダイアログ ボックスで [次へ] をクリックして、データ ストア構成ウィザードをもう一度開き、別の情報を指定できます。 一般的な設定エラーの原因と解決方法については、「ArcGIS Data Store のトラブルシューティング」をご参照ください。
データ ストアを作成したら、ArcGIS Data Store のインストール場所とは別の場所にバックアップ ディレクトリを構成します。 詳細は、「データ ストアのバックアップの管理」をご参照ください。
configuredatastore ユーティリティを使用したデータ ストアの作成
ArcGIS Data Store によって実装されるすべてのデータ ストア タイプを作成するには、configuredatastore ユーティリティを使用します。 データ ストアを構成すると、ArcGIS Enterprise ポータルのホスティング サーバーで使用される GIS Server サイトに登録されます。
configuredatastore ユーティリティは <ArcGIS Data Store installation directory>\arcgis\datastore\tools にインストールされています。
注意:
複数のビッグ データ ストア コンピューターの作成をスクリプト化している場合、追加のビッグ データ ストア コンピューターの作成をスクリプト化する前に、1 つのビッグ データ ストアを GIS Server サイトで、手作業で構成する必要があります。 他のビッグ データ ストアのコンピューターが同時に追加されないよう、スクリプトに待ち時間を含めます。
- コマンド シェルを開きます。
- configuredatastore.sh ユーティリティを実行して、データ ストアの登録に使用する GIS Server サイトのコンピューターのいずれかの完全修飾名、ArcGIS Server 管理者のユーザー名とパスワード、ArcGIS Data Store データ ディレクトリに使用するパス、作成するデータ ストアのタイプを指定します。
複数コンピューターの GIS Server サイトが存在する場合、サイトのコンピューターのいずれかの完全修飾ドメイン名を使用できます。
configuredatastore ユーティリティを実行するコンピューターにインストールされていないデータ ストア タイプを指定すると、エラー メッセージが表示されます。
次の例では、GIS Server サイトのコンピューターの名前は myserver.domain.com、管理者のユーザー名とパスワードはそれぞれ siteadmin と T1n@sp、データ ディレクトリは /home/dsuser/data です。
この例では、リレーショナル データ ストアが作成されます。
./configuredatastore.sh myserver.domain.com siteadmin T1n@sp /home/dsuser/data --stores relational
この例では、ビッグ データ ストアが作成されます。
./configuredatastore.sh myserver.domain.com siteadmin T1n@sp /temporal/data --stores spatiotemporal
タイル キャッシュ データ ストアを作成する場合、--mode 操作を使用して配置モードを指定できます。
タイル キャッシュ データ ストアの場合、モード オプションは プライマリ/スタンバイ モード (デフォルト) またはクラスター モードです。 --mode 操作を指定しない場合、タイル キャッシュ データ ストアは、プライマリ-スタンバイ モードで作成されます。
この例では、タイル キャッシュ データ ストアは、別のコンピューターにクラスター モードで作成されますが、前の例で作成したリレーショナル データ ストアと同じホスティング サーバーに登録されます。 クラスターに追加するすべてのタイル キャッシュ データ ストア コンピューター上でユーティリティを実行します。
./configuredatastore.sh myserver.domain.com siteadmin T1n@sp /home/dsuser/scenedata --stores tileCache --mode cluster
--mode 操作は、オブジェクト ストアの配置モードを指定するためにも使用されます。 オブジェクト ストアの場合、デフォルトでは、(プライマリ/スタンバイ モードの) 単一コンピューター デプロイメントとして配置されます。 オブジェクト ストアで複数のコンピューターを使用する場合は、オブジェクト ストアの作成時に --mode cluster を指定します。
この例では、3 台のコンピューターで構成されるクラスターが、オブジェクト ストアとして配置されます。 3 台の各 ArcGIS Data Store オブジェクト ストア コンピューターから同じユーティリティを実行します。
./configuredatastore.sh myserver.domain.com siteadmin T1n@sp /home/dsuser/ftcacheds --stores object --mode cluster
注意:
作成後にオブジェクト ストアまたはモードを変更することはできません。
タイル キャッシュ データ ストア、ビッグ データ ストア、またはオブジェクト ストアに対して ArcGIS Data Store のディレクトリを指定する場合、ディレクトリ パスにスペースを含めることはできません。
同じコンピューター上に、同じデータ ディレクトリを使用して、複数タイプのデータ ストアを作成するには、値をカンマで区切って指定します。 たとえば、--stores 操作で relational,tileCache を指定することで、リレーショナル データ ストアとタイル キャッシュ データ ストアを作成できます。 ただし、複数のデータ ストアを同じコンピューター上に配置することは、データ ストア間でメモリなどのリソースが競合し、パフォーマンスに悪影響を及ぼす可能性があるため、Esri ではお勧めしません。
次の手順
複数タイプのデータ ストアが必要な場合は、追加のデータ ストア タイプを作成します。 同一コンピューター上に別のタイプのデータ ストアを作成できますが、追加のデータ ストア タイプは別のコンピューターにインストールおよび構成します。
各タイプのデータ ストアに複数のコンピューターが必要な場合は、そこにコンピューターを追加します。
データ ストアを登録した GIS Server サイトが、ArcGIS Enterprise ポータルのホスティング サーバーとして構成されているのを確認します。
また、データ ストアのバックアップの安全な保存場所を構成します。