ArcGIS Notebook Server は、ArcGIS Enterprise ポータルと統合した完全なデータサイエンス プラットフォームです。
10.7 に導入された ArcGIS Notebook Server は ArcGIS Enterprise プラットフォームでのサーバー ロールであり、ArcGIS Notebook をホストして実行します。Python プログラミング言語を使用すると、空間解析、データサイエンスおよびコンピューター ラーニング ワークフローの作成、GIS データおよびコンテンツの管理、ArcGIS Enterprise 管理タスクの自動化を実行できます。
ArcGIS Notebook
ArcGIS Notebook は、ArcGIS と統合された Web インターフェイスであり、データサイエンス、データ管理、および管理スクリプトを作成、共有、実行できます。ノートブックの作成者は、ArcGIS Server とその解析エンジン、ArcGIS 地理空間解析ライブラリ、オープンソースの解析、統計、機械学習 ライブラリにアクセスできます。
ノートブックを使用すると、解析を実行し、ワークフローを自動化し、データと解析結果を地理コンテキストですばやく視覚化することができます。ノートブックは、コード、リアルタイムのビジュアライゼーションおよびマップ、データ ツールが組み合わされた効率の高い最新の環境です。
ArcGIS Notebook には、Esri の Python リソース (ArcGIS API for Python および ArcPy) が組み込まれています。Python は ArcGIS プラットフォームの一部であり、ArcGIS Notebook で Python スクリプトを ArcGIS Enterprise ポータルに直接作成することができます。この API を使用して、ダイナミック マップと地理空間データ ツールをノートブックに挿入できます。
ArcGIS Notebook Server サイトが ArcGIS Enterprise ポータル (他の専用の ArcGIS Server ロールがフェデレートされている) とフェデレートされている場合は、これらの解析ツールをノートブックで使用できます。たとえば、ArcGIS GeoAnalytics Server サイトを含む配置では、ノートブックに追加できる GeoAnalytics ツールがノートブック エディターに挿入され、ラスター解析用に指定された ArcGIS Image Server サイトを含む配置では、ラスター ツールがノートブック エディターに挿入されます。
ArcGIS Notebook Server の機能
ArcGIS Notebook Server は、サーバーのオペレーティング システムにインストールされ、構成されてから ArcGIS Enterprise ポータルとフェデレートされます。他の ArcGIS Server ロールと同様に、Web Adaptor を ArcGIS Notebook Server ソフトウェアの前に配置できます。
ArcGIS Notebook Server では、各ノートブック作成者の環境を区分するために、コンテナー (仮想化オペレーティング システム) が使用されます。コンテナーにより、各作成者はサーバー リソースのサブセットを使用できるため、作業や使用中のリソースが他の作成者を妨害することがありません。
これらのコンテナーは、Docker (サードパーティ製のソフトウェア コンポーネント) に割り当てられて管理されます。ArcGIS Notebook Server をインストールする前に、Docker の特定のエディションをインストールしておく必要があり、ArcGIS Notebook Server をインストールしたら、Docker と組み合わせて使用できるように構成する必要があります。
「Docker および ArcGIS Notebook Server」トピックでは、Docker の概要を示し、Docker を ArcGIS Notebook Server と組み合わせて使用する方法を説明し、利用可能な Docker のエディションを記載しています。
ArcGIS Notebook Server は、サイト内のノートブック作成者ごとにランタイムあたり 1 つのコンテナーを割り当てます。作成者だけがコンテナー内で作業できます。また、ノートブックの実行時に使用する計算リソースが他の作成者のコンテナーに影響することはありません。
対応する権限を持つポータル メンバーが最初の ArcGIS Notebook を開くと、コンテナーが ArcGIS Notebook Server サイト上で起動します。このセッションはノートブックとコンテナーの間にあり、ノートブックの実行時間を通して継続します。
10.7.1 以降、ArcGIS Notebook Server は、複数のコンピューターを 1 つのサイトに結合することができます。このような構成のコンピューターは同一になるよう構成され、各コンピューターは ArcGIS Notebook を実行できます。
ノートブック ランタイムとコンテナ イメージ
コンテナーは通常、初回起動時には空の状態です。コンテナーが正常に動作するのに必要なシステム ライブラリ、ツール、および構成は、コンテナ イメージファイルから提供されます。コンテナ イメージは、起動プロセスの一部としてコンテナに適用されます。
ヒント:
クラウド ソフトウェアを配置したことがあれば、空の仮想コンピューターと動作させるのに必要なコード、ツール、および設定を提供するコンピューター イメージに慣れているでしょう。コンテナ イメージは、コンテナの空の仮想 OS のように動作します。
Esri では、ArcGIS Notebook Server 向けに 2 種類のコンテナ イメージを用意しています。それぞれのコンテナ イメージには、Python リソースを ArcGIS Notebook で利用できるようにするノートブック ランタイムが含まれています。ランタイムごとに、これらのライブラリと依存関係のリスト (各 Python ライブラリの特定バージョンを含む) がパッケージ化されています。
ArcGIS Notebook Server には、[Standard] (ArcGIS API for Python と他の Python モジュールを含む) および [Advanced] (上記に加えて ArcPy も含む) という 2 つのランタイムがあり、対応するコンテナー画像の一部としてノートブックで利用できます。
ライセンスに応じて、Standard のコンテナ イメージだけか、Standard コンテナ イメージと Advanced コンテナ イメージの両方を受け取ることができます。
Windows コンピューターでは、ArcGIS Notebook Server サイトのコンテナーは、MobyLinuxVM と呼ばれる Linux エミュレーター (Hyper-V 環境に存在する) 内で管理されます。このため、Hyper-V ロールをコンピューターにインストールする必要があります。この要件は、ArcGIS Notebook Server のシステム要件に盛り込まれています。
コンテナを起動すると、Esri から受け取った 2 つのコンテナ イメージのうちの 1 つがコンテナに適用されます。適用されるランタイムとイメージは、次のようにポータル内のノートブック作成者の権限によって異なります。
- [ノートブックの作成と編集] 権限だけが付与されている作成者のコンテナには Standard コンテナ イメージが読み込まれます。これらの作成者が開くすべてのノートブックでは Standard ランタイムが使用されます。
- [高度なノートブック] 権限も付与されている作成者のコンテナには Advanced コンテナ イメージが読み込まれます。これらの作成者のノートブックのデフォルト ノートブック ランタイムは Advanced ランタイムです。ただし、これらの作成者には個々のノートブックのランタイムを指定するオプションも用意されているので、ノートブックで Standard ランタイムまたは Advanced ランタイムをどちらも使用できます。
ArcGIS Notebook Server と ArcGIS Server
ArcGIS Notebook Server には、ArcGIS Server ロールに一意の機能とアーキテクチャがあります。ArcGIS Notebook Server と他の ArcGIS Server ロールとの違いを次に示します。
- 他の ArcGIS Server ロールは主に、マップの描画、解析の実行、ジオプロセシング タスクの実行などを目的としてサービスをホストします。ArcGIS Notebook Server は主に ArcGIS Notebook をホストします。
- ArcGIS Notebook Server では、ノートブック作成者の環境を区分するためにコンテナが使用されます。各作成者がコンテナ内で使用している処理リソースは、他の作成者がその作成者のコンテナ内で使用しているリソースに影響しません。
- ArcGIS Notebook Server では、コンテナの割り当てに Docker ソフトウェアが使用されます。ArcGIS Notebook Server をインストールする前に、Docker をコンピューターにインストールして構成しておく必要があります。このインストール ガイドには、コンピューター上で Docker を設定する手順と推奨事項が記載されています。
- ArcGIS Notebook Server には独自のインストーラーがあり、My Esri Web サイトから入手できます。他の ArcGIS Server ロールでは、ArcGIS Server インストーラーが使用されますが、認証プロセスの実行中に特定のロールが割り当てられます。
- ArcGIS Notebook Server には、ArcGIS Server Manager アプリケーションも REST API Services Directory も存在しません。ArcGIS Notebook Server Administrator Directory が存在し、https://notebookserver.yourdomain.com:11443/arcgis/admin からアクセスできます。このディレクトリ内のすべての管理タスクは、ブラウザーを使用して手動で実行するか、プログラムによるリクエストで実行することができます。
ArcGIS Notebook Server をポータルとフェデレートしたら、レイヤーや Web アプリと同じ方法でノートブックをポータル Web サイトから作成できます。ArcGIS Notebook では ID ベースのセキュリティがポータルで使用され、管理者は、ノートブックを作成、共有、編集、表示できるユーザーを制御することができます。