ArcGIS Server のアーキテクチャはバージョン 10.1 で大きく変更されました。したがって、10.0 以前のバージョンからバージョン 10.9 にアップグレードする場合は、次のガイドラインに注意してください。10.1 以降のバージョンを ArcGIS Server 10.9 にアップグレードする場合、次のガイドラインは適用されません。代わりに、「既存の ArcGIS Server ユーザー」で、アップグレードに関するよくある質問と、詳細なアップグレード手順が記載されたトピックへのリンクをご参照ください。
10.0 以前のバージョンから 10.9 にアップグレードする準備ができている場合は、移行チェックリストを確認して作業を開始してください。
アップグレードの方法
ArcGIS Server のバージョン 10.0 からアップグレードする最も簡単な方法は、10.9 を 1 台または複数の新しいコンピューターにインストールすることです。そうすることで、新しい ArcGIS Server サイトの作成中に、既存のアプリとサービスのプロパティに立ち戻り、それらを参照できます。また、新しいサイトをテストして、準備が整えば直ちにトラフィックをそのサイトにリダイレクトできるため、ダウンタイムが最小化されます。
これ以外の配置済みコンピューターをアップグレードする方法では、10.0 ソフトウェアをアンインストールし、10.9 をインストールし、サービスを再配置し (自動で行われない)、アプリを更新する間、ある程度のダウンタイムを必要とします。配置済みコンピューターをアップグレードする場合は、アンインストール前にサービス構成のメモを取る必要があります。ArcGIS Server 10.0 以前の「アップグレード チェックリスト」には、記録しておく必要のある必須プロパティと、バックアップする必要のあるファイルの一覧が記載されています。
配置済みコンピューターをバージョン 10.0 からアップグレードする必要がある場合、本番サーバーで作業する前に、開発サーバーまたは仮想コンピューター上で試行することをお勧めします。
ArcGIS Server およびサービス
サーバー URL の維持
デフォルトでは、ArcGIS Server 10.9 サイトはポート 6443 を通じて Web サービスを公開し、「arcgis」というサイト名を使用します。作成したサービスの URL には、ポート 6443 と「arcgis」が含まれます。たとえば、次のように指定します。
ArcGIS Server のバージョン | URL の例 |
---|---|
10.0 以前 | http://gisserver.domain.com/planners/rest/services/MyMapService/MapServer |
10.9 | http://gisserver.domain.com:6443/arcgis/rest/services/MyMapService/MapServer |
10.0 の URL を新しいバージョンの ArcGIS Server でも使用する場合は、ArcGIS Web Adaptor をインストールする必要があります。ArcGIS Web Adaptor を使用すると、ArcGIS Server とエンタープライズ Web サーバーが接続され、バージョン 10.0 の配置に合わせたサイトの URL を構成できます。詳細については、「ArcGIS Web Adaptor について」をご参照ください。
サービスの移行
バージョン 10.0 のサービスは、新しいバージョンに自動では移行されません。これらのサービスの移行パスは、新しいバージョンを使用して再度作成することになります。新しいバージョンでは、公開するアイテムに対してより厳密な解析プロセスが実行され、サーバー上に効率的に公開できる状態であるか確認されます。この解析プロセスは時間がかかる場合がありますが、10.1 以降のバージョンで導入されたさまざまな変更にサービスを適合させるのに役立ちます。また、サービスのパフォーマンスを向上する方法も見つけやすくなります。
マップ キャッシュとグローブ キャッシュの移行
ArcGIS Server 10.0 以前のバージョンで作成したマップ キャッシュは、それより後のバージョンでも使用できます。ただし、10.0 より後のバージョンではサポートされていないマルチレイヤー キャッシュは除きます。マルチレイヤー キャッシュがある場合は、それを一連の融合キャッシュとして再構築する必要があります。
バージョン 10.5 の時点では、グローブ キャッシュはすでにサポート外となっています。
マップ キャッシュを移行するには、次の手順に従います。
- 新しい ArcGIS Server サイトで、10.0 のキャッシュを保持しているフォルダーを参照するサーバー キャッシュ ディレクトリを作成します。サーバー キャッシュ ディレクトリを作成する手順については、「ArcGIS Server Manager でのサーバー ディレクトリの作成」をご参照ください。または、10.0 のキャッシュを既存のサーバー キャッシュ ディレクトリに移動することもできます。すべての ArcGIS Server サイトに、少なくとも 1 つのサーバー キャッシュ ディレクトリが作成されます。
- ArcMap で [ファイル] > [共有] > [サービス] のウィザードを使用して、既存のキャッシュと同じ名前を持つサービスの作成を開始します。[サービス エディター] ダイアログ ボックスが表示されたら、中止して次の手順に進みます。[公開] はまだクリックしないでください。既存のキャッシュの名前にアンダースコア (_) がある場合、ArcGIS Server フォルダーにサービスを作成する必要があります。この場合、<フォルダー名>_<サービス名> というパターンに従います。
- [サービス エディター] ダイアログ ボックスの [キャッシュ] タブで、[キャッシュ ディレクトリ] プロパティを変更して、手順 1 で登録した移行されたキャッシュ ディレクトリを指すようにします。
- [サービス エディター] ダイアログ ボックスの [キャッシュ] タブで、既存のタイルの縮尺をすべて含むように最小キャッシュ縮尺および最大キャッシュ縮尺のスライダーを変更します。
- [サービス エディター] の [公開] をクリックしてサービスを公開します。
キャッシュ スクリプトの移行
マップまたはグローブ キャッシュの作成や更新をジオプロセシング スクリプトで行っていた場合、10.1 では [キャッシュ] ツールセットの多くのツールで、パラメーターの順序、名前、データ タイプが変更されているので注意してください。スクリプトの更新方法については、「ジオプロセシング ツール リファレンス」のトピックと例を慎重に確認してください。
コードのサーバー オブジェクト エクステンション (SOE) への移行
10.0 以前のバージョンでは、多くの開発者は Web ADF によってローカル (DCOM) 接続を作成して、ArcObjects にアクセスしていました。ArcGIS Server へのこれらのローカル接続は、10.1 から使用できなくなりました。その代わりに、サーバー オブジェクト エクステンション (SOE) を開発して、それらを REST Web サービスとして公開できます。SOE によって拡張された GIS サービスは、ArcGIS Services Directory に表示して、ArcGIS Web Mapping API を通じて使用することができます。
SOE の開発の詳細については、「サーバー オブジェクト エクステンションとは」をご参照ください。
既存の SOE の移行
前述したように、ArcGIS Server のローカル接続を使用する SOE は、10.1 以降のバージョンと互換性がないため、REST または SOAP Web サービスとして再構築する必要があります。
10.0 以前のバージョンで REST または SOAP Web サービスの SOE を開発していた場合は、新しいバージョンで SOE を使用する前に、64 ビット ライブラリを参照できるように SOE を構築または再構築する必要があります。また、SOE を配置できるように、SOE を *.soe ファイルとしてパッケージ化する必要もあります。このパッケージ化には、ArcGIS Server に付属している SOE の IDE テンプレートを使用できます。この手順については、「Java サーバー オブジェクト エクステンションの 10.9 への移行 」と「.NET サーバー オブジェクト エクステンションの 10.9 への移行 」をご参照ください。
セキュリティを適用している場合のアップグレード
ArcGIS Server は、セキュリティ設定を前のバージョンから自動的に移行しません。これは、セキュリティ設定を完全に移行するために必要な、以前のインストールのセキュリティ構成について、ArcGIS Server は十分な情報を認識できないためです。
セキュリティは ArcGIS Server をインストールしたときに、すでに有効になっています。デフォルトでは、匿名ユーザーがサービスを使用できるようになっています。Server Manager にいつでもサイン インして、セキュリティに使用するユーザーおよびロール ストアを指定できます。そして、サービスに対する権限を制限できます。詳細については、「ArcGIS Server の構成」をご参照ください。
Web アプリの移行
ArcGIS Server Manager は、ホスティング サービスと管理サービスにのみ重点を置いています。Web アプリケーションは構築できません。GIS Web アプリをコードを記述せずに構築したい場合は、ArcGIS Enterprise ポータルまたは ArcGIS Online を使用できます。これらには対話式のアプリ ビルダーが付属しており、以前のリリースで Server Manager を使用して Web アプリを構築したように、目的のフィーチャをポイントおよびクリックして Web アプリを設計することができます。
以前のバージョンの ArcGIS Server に付属していた Web ADF (Application Developer Framework) は廃止されました。新しい Web アプリを記述するときは、ArcGIS API for JavaScript を使用してください。これまで ADF で実行できた印刷、編集、その他のタスクは、ArcGIS API for JavaScript を使用しても簡単に実行できます。
アップグレードに関する一般的な質問
ここでは、移行時に発生する可能性がある一般的な質問を取り上げ、考えられる解決策を提示します。探している問題が見つからない場合は、「Esri Support Center」で記事を検索してみてください。
各種 ArcGIS コンポーネントをどのような順序でアップグレードすればよいですか?
ArcGIS Desktop と ArcGIS Server が複数のコンピューターに分散されている場合は、各種 ArcGIS コンポーネントを段階的にアップグレードできます。たとえば、次の手順に従います。
- いくつかのArcGIS Desktop クライアントをアップグレードします。このアップグレードが正常に実行されたことを確認した後で、すべての ArcGIS Desktop クライアントをアップグレードします。
- ArcGIS Server をアップグレードします。
ArcGIS Server をアップグレードすると同時にオペレーティング システムもアップグレードする必要がありますか?
ArcGIS Server は 64 ビット アプリケーションで、64 ビットのオペレーティング システムが必要です。32 ビットのオペレーティング システムを使用している場合、ArcGIS Server をインストールする前に、64 ビットのオペレーティング システムにアップグレードする必要があります。
使用するオペレーティング システムが ArcGIS Server でサポートされているかどうか不明の場合は、 のシステム要件をご参照ください。
ArcGIS Server サイトを作成するときに、以前のリリースで使用していたサーバー ディレクトリを再使用できますか?それとも、新しいサーバー ディレクトリのパスを入力する必要がありますか?
サイトを作成するときに、サーバーディレクトリのルート位置の入力を求められます。自動的に作成される空のディレクトリを配置する新しい場所を指定するか、以前のリリースのサーバー ディレクトリが含まれる場所を指定することができます。
以前のサーバー ディレクトリを再使用する場合は、Web サーバー管理ソリューションを使用して、以前のリリースのサーバー ディレクトリに関連付けられていた仮想ディレクトリを削除します。ArcGIS Server のバージョン 10.1 以降は、ディレクトリの仮想化に対応しているため、古い仮想ディレクトリは不要です。
サーバーディレクトリに、エクスプロード格納形式のマップ キャッシュが格納されている場合、サイトの作成に時間がかかることがあるため、注意してください。サイト作成処理では、ArcGIS Server のアカウントの権限がキャッシュ フォルダーに適用されます。大規模なエクスプロード格納形式のキャッシュの場合、この処理に長時間かかることがあります。
以前のリリースの SOC アカウントには、すでにデータフォルダーに対する権限があります。10.9 をインストールするときに、このアカウントを ArcGIS Server を実行するアカウントとして再使用できますか?
バージョン 10.0 以前の ArcGIS Server では、SOC アカウントと呼ばれるアカウントを作成し、すべてのデータ フォルダーに対する権限をそのアカウントに付与する必要がありました。SOC アカウントとその権限がすでに存在する場合、ArcGIS Server を実行するアカウントとして指定できます。そうすることで、移行中に実行する必要のある権限の再割り当て作業を減らすか、なくすことができます。