マップ キャッシュを操作する場合に目にする用語を次に示します。
タイル スキーマ
タイル スキーマは、キャッシュ内のタイルの参照方法を設定し、ソース マップ ドキュメントの空間参照とタイル グリッドの間のマッピングを行います。
タイル グリッドは、スキーマに参照付けられた詳細レベル (縮尺)、行、列を使用します。 スキーマは、キャッシュのタイルの縮尺レベル (詳細レベル)、タイルのサイズ (ピクセル単位)、最もよく表示されるタイルの画面解像度も定義します。
タイル スキーマは、マップ キャッシュを生成するために必要です。 デフォルトでは、タイル原点は、サービスのソース マップ ドキュメントによって使用される座標系の左上隅が開始場所になっています。
タイル スキーマ プロパティは、境界が存在する場所を定義します。
注意:
クライアントによっては、キャッシュをオーバーレイする際にタイル スキーマ プロパティが一致する必要があります。
プリセットまたは独自のカスタム仕様からタイル スキーマを選択した後、この設定グループを使用して、キャッシュ サービスのタイル スキーマをさらに変更できます。
詳細レベル
タイル スキーマには通常、多くの詳細レベルが含まれており、その間でユーザーはズームを実行できます。 ユーザーは、自分のキャッシュ サービスの詳細レベルのリストを変更できます。
マップによっては、ディスク領域の節約、生成時間の短縮、または表示の改善のために、タイル スキーマ内で極めて近い縮尺や極めて遠い縮尺でのキャッシュを行わないようにすることができます。
注意:
Scene Viewer でタイル コンテンツをレンダリングする際、およびベクター タイル レイヤーに対して制約が追加されます。 これらの制約では、詳細レベルの連続する縮尺値が 2:1 である必要があります。 これにより、詳細レベルが互いにオーバーラップし、ルート タイル内に収まるようになります。
ArcGIS は、マップの縮尺依存を調べて、キャッシュの詳細レベルの範囲を示します。 この範囲を調整するには、[詳細レベルの最小値] および [詳細レベルの最大値] パラメーターを使用します。 残りの詳細レベルはタイル スキーマから削除されませんが、[キャッシュ] タブに戻って範囲に含めない限り、それらの詳細レベルでタイルを作成することはできません。
タイルの原点
タイル スキーマの原点は、タイル スキーマ グリッドの左上の隅です。 原点は、必ずしもタイルの作成を開始する座標点であるとは限りません。 代わりに、共通のタイル スキーマ原点を使用することで、Web アプリでキャッシュが互いに適切にオーバーレイするようになります。
ほとんどの場合は、ソフトウェアが提案するデフォルトのタイル スキーマ原点を使用することをお勧めします。 デフォルトの原点は、マップ ドキュメントによって定義された座標参照の左上に設定されます。 マップ ドキュメントに座標参照が定義されていない場合は、マップに含まれているすべてのレイヤーの範囲の和を 2 倍にしたときの左上の点が使用されます。
タイル スキーマの原点をデフォルト以外の場所に設定する場合は、タイル スキーマの原点の右下のマップ エリアでのみタイルを作成できることに注意してください。 マップの特定のエリアのみをキャッシュする場合は、タイル スキーマの原点を変更するよりも、フィーチャクラスの境界に基づいてタイルを作成することをお勧めします。
DPI (Dots Per Inch)
DPI (Dot Per Inch) は、サーバーが生成するキャッシュ タイルの解像度を表します。 通常はデフォルトの 96 で十分です。 DPI を調整すると、タイルの縮尺に影響するので注意してください。
タイルの高さと幅
タイルの幅と高さはデフォルトで 256 ピクセルに設定されています。 この設定の推奨は、256 または 512 です。 別のキャッシュをオーバーレイするキャッシュを作成する場合は、両方のキャッシュで同じタイルの高さと幅を使用するようにしてください。
タイルの幅と高さに小さい値を選択すると、キャッシュからタイルをリクエストしたときにタイルごとに転送するデータの量が少なくなるので、アプリケーションのパフォーマンスが向上する可能性がありますが、リクエストするタイルの数は増加します。
タイル形式
この設定値に応じて、マップ サービスがタイルの作成時に使用する出力画像形式を決定されます。 画像形式は、ディスク上のサイズ、画質、タイルの背景を透過表示する機能に影響するため、どの画像形式を選択するかは重要です。
新しいキャッシュ タイル スキーマを初期化するときに、ArcGIS がマップのレイヤーを検証してデフォルトの画像形式を選択します。 マップにベクター レイヤーのみが含まれる場合、デフォルトは PNG です。 ラスター コンテンツの 1 つ以上のインスタンスが検出された場合、デフォルトは MIXED です。
このデフォルトを確認し、マップの目的にかなっているか判断します。 下記は、使用できる画像形式オプションと適切な使用方法をまとめたものです。
- [PNG] - タイルごとに、表示品質を損なわずにタイルの格納領域を最小化する PNG ビット深度が決まります。 多くのベクター マップに適しています。特に、色数の少ないマップ、単色の大きな帯を含むマップ、またはオーバーレイ ネットワークに適しています。 適切な PNG 形式が不明な場合は、まずこのオプションを使用してください。
- [PNG 8] - 道路や境界など、背景を透過表示する必要のあるオーバーレイ サービスには PNG 8 を使用できます。 PNG 8 を使用すると、情報を失うことなくディスク上に極小サイズのタイルを作成できます。
マップがアンチエイリアスを使用している場合は、PNG 8 の代わりに PNG または PNG 32 を使用すると、より高品質のラインとラベルが表示されます。 グラデーション塗りつぶしや陰影起伏のために多くの色がマップに使用されている場合も、PNG または PNG 32 を使用できます。
- [PNG24] - 道路や境界など 257 色以上のオーバーレイ サービスには PNG 24 を使用することができます (256 色以下の場合は、PNG 8 を使用してください)。
- [PNG 32] - 道路や境界などのラインまたはテキストに対してアンチエイリアスが有効にしてあるオーバーレイ サービスには、PNG 32 を使用できます。 256 を超える色と完全なアルファ透過表示をサポートしています。 PNG 32 は、ラインまたはテキストに対してアンチエイリアスが有効にしてあるオーバーレイ サービスにお勧めします。 PNG32 では、PNG24 よりもサイズの大きいタイルがディスク上に作成されます。
- [JPEG] - カラー バリエーションが豊富で、背景を透過表示する必要のないベースマップ サービスに使用する形式です。 たとえば、ラスター画像および非常に詳細なベクター ベースマップはほとんどの場合、JPEG で効率的に処理できます。
JPEG は、非可逆画像形式です。 画像の見た目に影響を及ぼすことがないように、データが選択的に削除されます。 この結果、ディスク上のタイルが非常に小さいサイズになりますが、マップがベクター ラインまたはラベルを含んでいる場合、ライン周囲に非常に多くのノイズや不明瞭領域が生成されることがあります。 そのような場合は、デフォルトの圧縮値 75 を増分してください。 値を 90 くらいまで増分すると、線画の許容品質と JPEG の小型タイル サイズとのバランスが保てるというメリットがあります。
ユーザーによって、どの程度の画質が許容範囲になるかは異なります。 ある程度の画像のノイズを許容できる場合は、JPEG を使用することで大量のディスク領域を節約できる場合があります。 タイル サイズを縮小すると、ブラウザーがタイルをダウンロードする時間が短縮されます。
- [MIXED] - 混合キャッシュはキャッシュの中心部で JPEG を使用し、キャッシュのエッジ部で PNG 32 を使用します。 他のレイヤー上にラスター キャッシュをきれいにオーバーレイしたい場合は、混合モードを使用してください。
混合キャッシュの作成時には、透過表示が検出される場所 (データ フレームの背景が表示される場所) ならどこにでも PNG 32 タイルが作成されます。 残りのタイルの構築には、JPEG が使用されます。 これにより、他のキャッシュ上への重ね合わせをしつつ、平均ファイル サイズを小さく抑えられます。 混合モード キャッシュを使用しない場合、他のキャッシュをオーバーラップする画像周囲に不透明な部分が表示されます。
- [LERC] - LERC (Limited Error Raster Compression) は、シングル バンドまたはピクセル深度が高い標高データ (浮動小数点、32 ビット、16 ビット、12 ビットのデータなど) にお勧めの効率的な非可逆圧縮方法です。 LERC は、LZ77 に比べ、浮動小数点データの圧縮率に優れ (5 ~ 10 倍)、圧縮速度も速くなります (5 ~ 10 倍)。 LERC は整数データにもお勧めします。 整数データを使用し、指定された誤差の限界値が 0.99 以下の場合、LERC は可逆圧縮と見なされます。
注意:
Limited Error Raster Compression (LERC) は、イメージ サービスでのみ使用できます。マップ サービスはサポートされていません。
標高データ (サーフェス) は、主にテレイン モデルなどの地表を表す 3D ビューで使用されます。 地表より上にあるオゾン層や、地表より下にある地層など、地表を表さないサーフェスを使用することもできます。 LERC 圧縮法を使用して地表レベルにないサーフェスを提供する場合、すべての詳細レベルでデータを公開することを強くお勧めします。 そうすることで、データを表示する際に、最も粗い解像度を超えて縮小してしまい、コンテンツのレンダリングが停止するということがなくなります。 地表を提供する標高コンテンツの場合、存在するかもしれないギャップを埋まるようにサーフェスを使用できるため、この問題がほとんど発生しません。
- LERC を選択する場合は、[圧縮] 入力ダイアログ ボックスを使用して圧縮値を指定します。 圧縮値は、1 ピクセルあたりに適用可能な最大許容エラー値を示します (画像の平均ではありません)。 この値は、モザイク データセットの単位で指定します。 たとえば、誤差が 10 cm でモザイク データセットがメートル単位である場合は、「0.1」と入力します。
- 所定の縮尺でソース データがサポートされていない場合、またはオーバービューが存在しない場合、LERC ベースのキャッシュ サービスは描画のためのリサンプリングを実行しません。 LERC ベースのキャッシュ サービスには、サービスが標高データを含むかどうかを示すプロパティ ファイルも含まれます。 LERC ベースのキャッシュは、3D シーンの描画時に最高の効果を引き出せるよう、標準の 256 x 256 より 1/2 ピクセル大きなサイズのキャッシュ タイルを使用します。
- LERC 形式は非変換圧縮アルゴリズムを使用するため、圧縮値 (最大許容エラー値) の範囲は 0 ~ 1,000 となります。
ヒント:
デフォルトの画像形式の変更が必要になる一般的なシナリオの 1 つは、アンチエイリアスを使用するベクターのみのベースマップを構築するときです。 この場合は、圧縮品質が高い JPEG または MIXED 形式の方が、タイルが占めるディスク容量がはるかに小さくなるため、デフォルトの PNG よりも適切です。
大規模なキャッシュの画像形式を決定する前に、マップの代表領域となる小規模なキャッシュを構築し、テスト アプリケーションのタイル品質とパフォーマンスを確認します。 複数のキャッシュを使って作業している場合、各キャッシュ用に小規模なテスト キャッシュを構築し、テスト アプリケーションに追加して、予期したとおりにオーバーレイすることを確認します。 これにより、キャッシュ全体を作成する前に調整を行うことができます。
圧縮
圧縮とは、JPEG または混合画像形式キャッシュを使用しているときの JPEG 圧縮の量を指します。 値が高いほど JPEG の品質が高く、そのため圧縮量は小さくなります。 画像の場合、通常は 55 ~ 75 の値で十分です。この範囲ならば品質の視覚的損失がありません。 ベクトルやその他のはっきり定義されたフィーチャまたは範囲の場合、高品質の 90 を出発点とすることをお勧めします。
タイル パッケージ
タイル パッケージは、.tpkx 拡張子を持つ圧縮ファイルで、Compact Cache V2 形式で格納された画像タイルと、.json ファイルに格納されたタイル スキーマとその他のメタデータが含まれています。 これらのパッケージは、Web アクセスが制限されているオフライン シナリオで、マップ キャッシュ コンテンツの転送やマップ コンテンツへのアクセスに使用されます。 詳細については、「タイル パッケージのオープン仕様」をご参照ください。
Web タイル レイヤー向けのコンテンツは、パッケージを使用して ArcGIS Pro で生成することもできます。 詳細については、「タイル パッケージの共有」と「ベクター タイル パッケージの共有」をご参照ください。
キャッシュの格納形式
ラスター キャッシュは compact v2 形式で格納されます。この形式では、16,384 個のタイルがバンドル ファイルに格納されます。 個々のタイル サイズは、マップ サービス キャッシュ タイル スキーマの生成 (Generate Map Server Cache Tiling Scheme) またはマップ サービス キャッシュ スキーマの作成 (Create Map Server Cache Scheme) ジオプロセシング ツールを使用して定義されたキャッシュ タイル スキーマで定義されます。
キャッシュの作成中に、テンポラリ ファイルの .lock と .done がキャッシュ ファイルに生成されます。 .lock ファイルにより、ArcGIS Server で作成中のバンドルを記録できます。 .lock ファイルが存在しても、バンドルがクライアントにアクセスできないというわけではありません。 同様に、.done ファイルを使用すると、ArcGIS Server で作成済みのバンドルを記録できます。 すべての .lock ファイルと .done ファイルは、キャッシュ ジョブが完了したら削除されます。
各レベルにバンドルを 1 つだけ含む、小さなキャッシュを作成することができます。 ただし、バンドルの境界は地理データにまたがっていることが一般的であるため、1 つのレベルに複数のバンドルが作成されます。 大きなキャッシュには多数のバンドルが含まれます。
バンドルの境界はタイル スキーマ原点によって決定され、調整することはできません。 たとえば、町内/通りレベルの縮尺である 1:4096 の場合、最大数のデータを含む 1 つのバンドルでは、米国東部にある中規模の郡を包含できます。
タイルを更新する場合、バンドル全体が再作成されることはありません。 代わりに、4096 x 4096 ピクセル (アンチエイリアスを使用しない場合) または 2048 x 2048 ピクセル (アンチエイリアスを使用する場合) のエリアが更新されます。 このエリアの単位をスーパータイルと呼ぶことがあります。
Web API を含む ArcGIS クライアントは、コンパクト キャッシュ形式で作成されたバンドル ファイルを読み取ることができます。 Web クライアントは、ArcGIS Server サイトに対して、タイルの特定のレベル、行、および列を取得するための呼び出しを発行します。 ArcGIS Server はそのリクエストを受信し、バンドルから適切なタイルを返します。
注意:
コンパクト キャッシュ形式には、10.0 で導入された compact と 10.3 で導入された compactV2 の 2 つのバージョンがあります。 compact バージョンには、インデックスとして機能する個別の .bundlex ファイルが含まれています。compactV2 バージョンでは、インデックスが .bundle ファイルに組み込まれています。 compactV2 により、キャッシュがネットワーク共有またはクラウド ストアに配置されている場合は特に、パフォーマンスが向上します。これは、バージョン 10.3 以降で動作する ArcGIS Server サイトにのみ互換しており、これらのバージョンではデフォルトとなっています。
compactV2 形式の compact キャッシュを ArcGIS Server 10.0 ~ 10.2 で動作するサイトに移動させるには、ArcGIS Pro の [マップ サービス キャッシュのエクスポート (Export Map Server Cache)] ツールを使用します。
キャッシュ ディレクトリ
デフォルトでは、ArcGIS Server は、マップおよびイメージ サービスのキャッシュを、ArcGIS Server サイトを構成したときに作成されたサーバー キャッシュ ディレクトリに作成します。 ただし、キャッシュ ファイルを別の場所に格納するように構成することができます。
サイトのキャッシュ ディレクトリを構成するとき、公開者は次のいずれかのディレクトリを選択して、マップおよびイメージ サービスのキャッシュを格納します。
- 共有ディレクトリ - マップおよびイメージ キャッシュの共有ディレクトリを構成するには、「サーバー ディレクトリ」と「Server Manager でのサーバー ディレクトリの追加」のトピックをご参照ください。
- クラウド ストレージの場所 - キャッシュ用のクラウド ストアを構成するには、「キャッシュ ディレクトリとしてのクラウドのデータ ストア」と「Server Manager を使用したデータの ArcGIS Server への登録」のトピックをご参照ください。
サーバー キャッシュ ディレクトリを開いて、キャッシュ タイルとタイル スキーマ ファイル conf.xml を調べることができます。 キャッシュ ディレクトリには、構築済みのタイルに関する情報を含む、ファイル ジオデータベースの status.gdb も格納できます。
注意:
ホスト タイル レイヤー (ラスター、ベクター、または標高) のキャッシュ コンテンツは、ホスティング サーバー サイトのキャッシュ ディレクトリに格納されます。
ベースマップ
ベースマップは、レイヤーからのデータのオーバーレイと地理情報の視覚化を実行できる参照マップとして機能します。 個々のベースマップは、複数のフィーチャ、ラスター、または Web レイヤーで構成することができます。 ベースマップは、マップの基礎となるもので、作成データのコンテキストを提供します。 参照レイヤーは操作レイヤーの上に描画され、背景レイヤーは操作レイヤーの下に描画されます。 多くのキャッシュ マップ レイヤー、イメージ レイヤー、ベクター タイル レイヤーは、ベースマップとしてレンダリングされる目的で構築されています。
詳細については、「ベースマップのカスタマイズ」をご参照ください。