ArcGIS Image Server は、分散ラスター解析および分散画像処理を含んでいます。ArcGIS Image Server 分散解析は、World Elevation や高解像度の衛星画像などの、1 つの大きいラスター データセットを操作できます。さらに、現在の Landsat 8 アーカイブや増大する Sentinel-2 アーカイブなど、大量の画像のコレクションにも適用できます。
ラスター解析では、既存の GIS データと画像データを含め、大規模な画像とラスターのコレクションに対する拡張性の高い分散処理を可能にします。ArcGIS Enterprise ポータルでは、組み込みのラスター解析ツールを使用して、保存されるレイヤーを処理したり、新規作成したりできます。これらのレイヤーは、イメージ レイヤーおよびフィーチャ Web レイヤーとして利用可能にすることができます。
ラスター解析の実行例としては、次の 2 つがあります。
- 農業評価を行うことができるように、複数のバンド画像から植生カバレッジ サーフェスを計算する
- 州全体の標高データおよび土地被覆データを使用して、太陽光発電所を建設する候補地を検索する
備考:
ArcGIS Enterprise 10.7.1 リリース以降、多くのディープ ラーニング ラスター解析サービスが導入されています。これらのディープ ラーニング サービス タスクを使用することで、画像からトレーニング サンプルをエクスポートしたり、既存のディープ ラーニング モデルを使用した画像フィーチャ識別の実行により、ピクセルの分類やフィーチャの検出を行ったりすることができます。これらのディープ ラーニング ワークフローを実行するために、Portal for ArcGIS および ArcGIS Server では、ディープ ラーニング python モジュールをインストールするための追加構成が必要です。詳細については、「ディープ ラーニング ラスター解析用の ArcGIS Enterprise の構成と配置」をご参照ください。
ラスター解析ツールへのアクセス
ラスター解析ツールは、Map Viewer、ArcGIS Python API、ArcGIS REST API、および ArcGIS Pro で使用できます。
Map Viewerからのツールへのアクセス
- 適切な権限を持つメンバーとしてポータルにサインインします。
ラスター解析を実行するために必要な最小限の権限のセットは、公開およびラスター解析です。
- [コンテンツ] - [作成、更新、および削除] および [ホスト フィーチャ レイヤーの公開]
- [コンテンツおよび解析] - [ラスター解析]
適切な権限の設定の詳細については、「ラスター解析を実行するためのポータルの構成」をご参照ください。
- [マップ] をクリックしてMap Viewerを開きます
- [解析] をクリックして、[ラスター解析] ツールを選択します。
備考:
[解析] ボタンまたは [ラスター解析] タブがMap Viewerに表示されない場合は、ポータル管理者に問い合わせてください。お使いのポータルが ArcGIS Image Server で構成されていないか、ユーザーにツールを実行する権限がないことが考えられます。ツールに必要な権限がない場合、ツールは表示されません。
Map Viewer ツールの概要
ラスター解析ツールは、次の 2 つのデータ タイプに対して実行できます。
- イメージ レイヤー
- フィーチャ レイヤー
次の表に、ラスター解析ツールについての説明を示します。各解析ツールは、複数のカテゴリに分かれています。これらのカテゴリは、論理的にグループ分けされており、ツールのアクセス方法や使用方法にはまったく影響しません。
画像の分析
これらのツールは、植生解析、変化の検出、画像分類などの特定の目的で、アルゴリズムに基づいて画像から情報を生成します。
ツール | 説明 |
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植生の監視 | このツールは、マルチバンド ラスター レイヤーのバンドに対する算術演算を実行して、分析範囲の植被情報を明確にします。 このツールの出力はホスト イメージ レイヤーです。 |
パターンの分析
これらのツールは、データに存在する空間パターンを調査します。
ツール | 説明 |
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密度の計算 (Calculate Density) | このツールでは、ある現象の既知の数量 (ポイントまたはラインの属性として表す) をマップ上に分布することによって、ポイント フィーチャまたはライン フィーチャから密度マップを作成します。結果として出力されるのは、低密度から高密度に分類されたエリア ポリゴンのレイヤーです。 このツールの出力はホスト イメージ レイヤーです。 |
ポイントの内挿 (Interpolate Points) | このツールを使用すると、一連のポイントからの計測値に基づいて、新しい場所の値を推定できます。このツールは、各ポイントの値を含むポイント データを取得して、推定値のラスターを返します。 このツールの出力は、ホスト イメージ レイヤーとホスト フィーチャ レイヤーであり、表形式で示されます。 |
テレインの分析
これらのツールは、デジタル標高モデル (DEM) から傾斜角、傾斜方向、可視領域サーフェスを計算します。
ツール | 説明 |
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傾斜角の計算 | このツールは、入力標高データの傾斜角が表示されるサーフェスを作成します。傾斜角は、各デジタル標高モデル (DEM) セルの標高の変化率を表します。 このツールの出力はホスト イメージ レイヤーです。 |
可視領域の作成 | このツールは、サーフェスの地形図を考慮に入れて、観測者が見ることのできるエリアを特定します。入力ポイントの位置によって、観測者 (地上にいる人または火の見櫓の監視人など) または観測されるオブジェクト (風力タービン、給水塔、乗り物、またはその他の人など) を表すことができます。結果は、観測者の位置から見ることができるエリアを定義します。 このツールの出力はホスト イメージ レイヤーです。 |
傾斜方向の取得 | このツールは、標高データ ソースから傾斜方向マップを作成します。傾斜方向は、各セルから近傍に向かって下りの傾斜角が最大の方向を特定します。傾斜方向は、斜面の方向と考えることができます。出力ラスターの値は傾斜のコンパス方向になります。 このツールの出力はホスト イメージ レイヤーです。 |
集水域ラスターの作成 (Watershed) | このツールは、ラスター内のセルに対する集水域を決定します。 このツールの出力はホスト イメージ レイヤーです。 |
ディープ ラーニング
これらのツールでは、ディープ ラーニング推論ツールを使用して、画像内の特定のフィーチャを検出したり、ラスター データセット内のピクセルを分類したりすることができます。
ツール | 説明 |
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ディープ ラーニングを使用したピクセルの分類 (Classify Pixels Using Deep Learning) | 入力ラスターにトレーニング済みディープ ラーニング モデルを実行して、有効な各ピクセルにクラス ラベルを割り当てた分類済みラスターを作成します。 このツールの出力はホスト イメージ レイヤーです。 |
ディープ ラーニングを使用したオブジェクトの検出 | 入力ラスターにトレーニング済みディープ ラーニング モデルを実行して、検出したオブジェクトを含むフィーチャクラスを作成します。フィーチャには、検出されたオブジェクトの周囲の境界四角形やポリゴン、またはオブジェクトの中心のポイントを指定できます。 このツールの出力はホスト イメージ レイヤーです。 |
ディープ ラーニング用のトレーニング データをエクスポート (Export Training Data For Deep Learning) | ラベル付きのベクター データまたは分類画像を使用して、入力画像データからトレーニング サンプル画像チップを生成します。 サービス ツールの出力は、出力画像チップ、ラベル、およびメタデータ ファイルが格納されるデータストア文字列です。 |
備考:
ArcGIS Enterprise 10.7.1 の [ディープ ラーニング用のトレーニング データをエクスポート (Export Training Data for Deep Learning)] ツールは、ArcGIS API for Python および ArcGIS REST API からのみ使用できます。Map Viewer や ArcGIS Pro では利用できません。データの管理
これらのツールは、ピクセル値のクリップ、マスク、再マッピング、およびフィーチャ データへの変換、フィーチャ データからの変換などの、画像データの管理に使用されます。
ツール | 説明 |
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フィーチャをラスターに変換 (Convert Feature To Raster) | このツールは、フィーチャをラスター データセットに変換します。 ポイント、ライン、またはポリゴン フィーチャを含むフィーチャクラスをラスター データセットに変換できます。 このツールの出力はホスト イメージ レイヤーです。 |
ラスターをフィーチャに変換 (Convert Raster To Feature) | このツールは、ラスターをポイント、ライン、またはポリゴンとしてフィーチャ データセットに変換します。 このツールの出力はホスト フィーチャ レイヤーです。 |
ラスターの抽出 | このツールを使用すると、ラスターを境界 (長方形領域または画面上に対話形式で定義した形状のいずれか) にクリップできます。マップ上に現在表示されている領域の範囲までクリップするか、ポリゴンで定義された分析範囲までクリップすることができます。 このツールの出力はホスト イメージ レイヤーです。 |
再分類値 | このツールを使用すると、ラスター データのピクセル値を変更または再分類できます。ピクセル値を再分類するには、ピクセル値の範囲を指定して出力ピクセル値にマッピングします。出力ピクセル値は有効な値または NoData 値のいずれかであり、ピクセルには既知の値が関連付けられていません。 このツールの出力はホスト イメージ レイヤーです。 |
データの集約
このツールを使用すると、1 つのデータセットを使用して、別のデータセットの値から集約するエリアを定義できます。
ツール | 説明 |
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エリア内でのラスターの集約 (Summarize Raster Within) | このツールは、最初の入力レイヤーで定義されたエリア (ゾーン) に基づいてラスターを集約します。 このツールの出力はホスト イメージ レイヤーです。 |
近接エリアの分析
これらのツールを使用すると、近接エリアに基づいて分析を実行し、目的地までの最適経路を特定できます。
ツール | 説明 |
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距離の計算 | このツールは、1 つのソースまたはソースのセットからのユークリッド距離、方向、および割り当てを計算します。 このツールの出力はホスト イメージ レイヤーです。 |
最適な移動コスト ネットワークの決定 | このツールは、入力地域から、最適コスト ネットワークを計算します。 このツールの出力はホスト フィーチャ レイヤーです。 |
移動コスト パスの決定 (ポリライン) | このツールは、ソースと既知の目的地の間のポリラインとしての最小コスト パスを計算します。 このツールの出力はホスト フィーチャ レイヤーです。 |
ArcGIS Python API からツールへの Web UI アクセス
ArcGIS Python API を介して、GIS アナリストやデータ科学者は、組織で利用可能なラスター解析ツールを使用した空間データの検索、視覚化、解析、変換を実行できます。この API の解析機能の詳細については、ドキュメント サイトをご参照ください。
これらのラスター解析ツールには、raster モジュールからアクセスできます。
ArcGIS Python API からのツールへのアクセス
クライアント ArcGIS Pro またはMap Viewerのユーザー インターフェイスを介する以外に、ラスター解析サービスには、ArcGIS REST API を介してアクセスすることもできます。ラスター解析サービス タスクは、ジオプロセシング ツールに基いて、タスクごとに分類された一般的なラスター解析ツールを提供します。それらのタスクは、パターンの解析、テレインの解析、データの管理、データの集計、並列処理を使用したラスター データの処理、およびデータの分類を行います。
[ラスター関数エディター] は、Enterprise ポータルを介して Map Viewer に公開されます。[ラスター関数エディター] は、画像およびラスター解析処理チェーンを構築するためのビジュアル プログラミング インターフェイスです。ワークフローは、ラスター関数テンプレート (RFT) として保存できます。これにより、画像解析および処理を自動化できます。RFT の作成と変更は、関数エディター パネルで行うことができます。[ラスター関数エディター] には、ラスター関数の大規模なギャラリーが含まれています。これらのラスター関数は、ビジュアル プログラミング ツールを使用して、[ラスター関数テンプレート] (RFT) と呼ばれるラスター関数処理チェーンに結合することができます。RFT は、テスト、編集、保存、およびエンタープライズの他のメンバーとの共有を行うことができます。
上のラスター解析サービス タスクに加えて、[ラスターの生成] 解析ツールを使用して、個別のラスター関数またはラスター関数チェーン内で結合されたラスター関数を利用し、分散ラスター解析を実行できます。このツールは、適切に定義されたラスター関数の JSON オブジェクトを入力として受け取り、関数定義に基づいて解析を実行します。ユーザーは、システムに組み込まれた現在サポートされているラスター関数、またはユーザー独自のカスタム ラスター モデルのいずれかを、直接使用できます。分散ラスター解析処理および分散出力の格納に使用できる豊富な関数のリストについては、「ラスター関数オブジェクト」をご参照ください。
イメージ レイヤーの作成
[イメージ レイヤーの作成] を使用すると、上記のラスター解析ツール、REST API、および Python API での使用に最適化されたイメージ レイヤーを作成できます。作成されたイメージ レイヤーをラスター ストアに書き込み、イメージ サービスとして公開できます。入力として使用する画像データは、ローカル フォルダーまたはデータ ストアから取得できます。出力には、ホスト イメージ レイヤーまたは登録済みデータソースを参照するイメージ レイヤーを指定できます。登録済みデータ ソースを参照するイメージ レイヤーは、エンタープライズでは管理されていません。参照されたイメージ レイヤーを削除しても、データはデータ ストアから削除されません。
ArcGIS Pro からのツールへのアクセス
ラスター解析ツールには、ArcGIS Pro のポータルからアクセスできます。詳細については、ArcGIS Pro のヘルプ ドキュメントをご参照ください。