このチュートリアルは、Collector for ArcGIS を現場で使用して、レッドライン マップから提供された編集内容を確認する組織のメンバーを対象にしています。その場合フィールド スタッフは、最新データを取得するために、ジオデータベースのデフォルト バージョンからマップをダウンロードする必要があります。フィールド スタッフがマップをダウンロードすると、バージョンが作成されます。フィールド スタッフは、事務所に戻った後に、現場で行った編集内容を同期し、Collector からマップを削除し、マップのバージョンをデフォルト ジオデータベース バージョンに対してリコンサイルおよびポストします。このプロセスを 1 日に複数回繰り返すことができます。各プロセスが完了すると、フィールド スタッフはオフライン マップのバージョンの削除も行います。
以下のセクションでは、次のワークフローについて説明します。
- オフラインで使用するためのベースマップの構成 - ポータル管理者は、オフラインで利用可能なベースマップを使用するように、ポータルを構成します。
- グループの作成とメンバーの招待 - ポータル管理者または組織の別のメンバーは、Portal for ArcGIS でグループを作成し、Web マップを編集するためにオフラインで利用する必要のあるメンバーをそのグループに追加します。
- フィーチャ サービスの公開 - 別の従業員は、バージョン対応登録されたデータを含むマップを ArcMap に作成し、フィーチャ サービスを GIS Server サイトで公開します。
- ポータルへのフィーチャ サービスの追加 - 公開者は、フィーチャ サービスをアイテムとしてポータルに追加し、それをグループで共有します。
- Web マップの作成 - グループのメンバーは、フィーチャ サービスを含む Web マップを作成し、その Web マップをグループで共有します。
- オフラインでの Web マップの利用 - フィールド スタッフは、Collector for ArcGIS からポータルに接続し、Web マップのローカル コピーをダウンロードします。フィーチャ サービスで使用されるデータのバージョンも取得します。フィールド スタッフは、現場でデータに対して変更を行います。
- 編集内容の同期 - フィールド スタッフは、事務所に戻ると、ネットワークに接続して、現場で行った変更内容を同期します。
- 編集内容のリコンサイルとポスト、バージョンの削除 - 個々のフィールド スタッフは、デフォルト ジオデータベース バージョンとリコンサイルし、編集内容をそのデフォルトにポストすることができます。または、このプロセスを自動化することもできます。フィールド スタッフは、リコンサイルとポストが完了した後に、マップをダウンロードしたときに作成されたオフライン マップ バージョンを削除できます。
- ジオデータベースの圧縮 - ジオデータベース管理者は、エンタープライズ ジオデータベースを定期的に圧縮する必要があります。
オフラインで使用するためのベースマップの構成
Portal for ArcGIS に含まれているデフォルト ベースマップは、ArcGIS Online から取得されたものです。これらのベースマップを、オフラインで利用する Portal for ArcGIS のマップで使用することはサポートされていません。ポータル管理者は、以下のいずれかを行って、ベースマップをオフラインで利用できるように準備します。
- クライアントがキャッシュ タイルをエクスポートできるように有効化された GIS Server マップ サービスから Portal for ArcGIS にベースマップを作成します。それらのベースマップを、ベースマップの格納専用に作成したグループで共有し、このグループをポータルのベースマップ ギャラリーとして設定します。カスタム ベースマップを設定する手順については、『Portal for ArcGIS 管理者ガイド』の「ベースマップのカスタマイズ」をご参照ください。
- デフォルトの ArcGIS Online ベースマップを、マップ アイテムとしてポータルに追加します。これには、ArcGIS Online のアカウントが必要です。手順については、『Portal for ArcGIS 管理者ガイド』の「例: オフライン ワークフローで使用するための Esri ベースマップの準備」または Collector for ArcGIS ヘルプの「オフラインでのマップの利用」をご参照ください。
グループの作成とメンバーの招待
グループを作成、更新、および削除する権限を持つ組織のメンバーがポータルにサイン インし、FieldWorkers という名前のグループを作成します。グループが作成された後に、グループの所有者は、組織内のフィールド スタッフをそのグループに追加します。
グループを作成します。
- ポータルにサイン インします。
- [グループ] をクリックします。
- [グループの作成] をクリックします。
- グループの [名前] に「FieldWorkers」と入力します。
- グループの [サマリー]、[説明]、および [タグ] を入力します。
- [ステータス] リストで [プライベート] を選択します。この場合、メンバーをグループに招待します。
- [すべてのメンバー] がグループへの [提供者] になることを許可します。
- [保存] をクリックして、グループを作成します。
次に、ユーザーをグループに追加します。
- グループのアイテム プロパティが開かれた状態で、[ユーザーの招待] をクリックします。
- 組織のメンバーの名前を入力し、[検索] をクリックします。
- [ユーザー] の下でメンバーの名前をクリックし、そのメンバーを [招待リスト] に追加します。
- このグループのメンバーにするその他の組織のメンバーを検索して、追加します。
- この場合、誰をグループのメンバーにするべきかがわかっているため、メンバーを確認する必要はありません。[確認メッセージを表示せずに、組織サイトのメンバーをすぐに追加] をオンにします。
- [グループに追加] をクリックして、メンバーを即座に FieldWorkers グループに追加します。
フィーチャ サービスの公開
まず、オフラインで編集するデータを含むフィーチャ サービスを公開する必要があります。
公開者は、ArcMap を起動し、デフォルト ジオデータベース バージョンからマップにデータを追加します。この例では、フィーチャクラスを会社のエンタープライズ ジオデータベースからマップに追加します。このフィーチャクラスはトポロジに属しています。そのため、データをバージョン対応登録し、編集可能にします。
公開者は、ArcMap から InspFS という名前のフィーチャ サービスを公開します。公開者は、公開時に、[サービス エディター] で [同期] 機能を確認します。これは、このサービスがオフライン マップでの使用を目的にしているためです。公開者は、データが編集される予定であるため、[検索]、[更新]、[作成]、および [削除] の各機能についても確認します。また、公開者は、[高度な設定] をクリックして [フィーチャ サービスの高度な設定] を表示します。
[高度な設定] ダイアログ ボックスでは、[以下のそれぞれでバージョンを作成] オプションが有効化されています。この例では、公開者は、[高度な設定] ダイアログ ボックスで [ダウンロードされたマップ] がオンになっていることを確認します。このオプションが設定されていると、フィールド スタッフがマップをオフラインで利用するときに、一意の名前が付けられたバージョンがオフライン マップ用に作成されます。その後、このバージョンはフィールド スタッフが同期を行うときに使用されます。
独自のフィーチャ サービスをオフラインで利用するために公開するには、以下の手順に従います。
- ArcMap を起動し、バージョン対応登録されたデータをエンタープライズ ジオデータベースのデフォルト バージョンからマップに追加します。
- マップに対してシンボルの変更やフィルター設定の適用などの変更を行い、マップ ドキュメントを保存します。
- GIS Server サイトに、フィーチャ アクセスでマップ サービスを公開します (フィーチャ サービス) ([ファイル] > [共有] > [サービス] の順にクリックします)。
- GIS Server サイトへの公開者接続を選択します。
- [パラメーター] ウィンドウで [ケーパビリティ] をクリックし、[フィーチャ アクセス] をオンにして [KML] をオフにします。
- [パラメーター] ウィンドウで [フィーチャ アクセス] をクリックし、[クエリ]、[同期]、[作成]、[更新]、および [削除] の各操作が有効であることを確認します。
- [高度な設定] をクリックします。
- [フィーチャ サービスの高度な設定] ダイアログ ボックスの [同期] セクションで、[ダウンロードされたマップ] をクリックします。これは、マップをダウンロードするたびにバージョンが作成されることを指定します。
- [OK] をクリックし、[フィーチャ サービスの高度な設定] ダイアログ ボックスを閉じます。
- [パラメーター] ウィンドウで [アイテム説明] をクリックし、少なくともフィーチャ サービスの [サマリー] と [タグ] を入力します。
- [分析] をクリックし、データを公開できることを確認します。分析によってエラー メッセージが返された場合、公開するには、まずエラーを修正する必要があります。
- 分析でエラーが返されなかった場合は、[公開] をクリックします。
フィーチャ サービスが GIS Server サイトで公開されます。
次に、組織のメンバーが Portal for ArcGIS にサイン インし、フィーチャ サービスをポータルに追加します。
Web マップの作成
コンテンツを作成する権限を持つ FieldWorkers グループのメンバーがポータルにサイン インし、Web マップの作成、マップへのフィーチャ サービスの追加、マップとフィーチャ サービスの FieldWorkers グループでの共有を行います。ポータル メンバーは、Web マップのオフライン モード プロパティを有効化し、Web マップを Collector for ArcGIS へのダウンロードに使用できるようにします。
以下の手順に従って、独自の Web マップを作成し、フィーチャ サービスを追加してそれを共有し、マップのダウンロードを有効化します。
- Portal for ArcGIS の組織サイトにサイン インします。
コンテンツの作成、更新、および削除が可能なポータルのロールのメンバーでサイン インする必要があります。
- [マップ] をクリックします。
Map Viewerが開きます。
- フィーチャ サービスをマップに追加します。
- [追加] > [Web からレイヤーを追加] の順にクリックします。
- 必ず、ドロップダウン リストで [ArcGIS Server Web サービス] を選択します。
- [URL] テキスト ボックスにフィーチャ サービスの URL を入力するか、貼り付けます。
- [レイヤーの追加] をクリックします。
- シンボルの変更などのマップに対する変更を行います。
注意:
最初のセクションで述べたように、デフォルトのベースマップを使用することはできません。必ず、ポータル管理者がベースマップをオフライン用に構成しておきます。
- マップを保存 ([保存] > [保存] の順にクリック) します。
- マップのタイトル、タグ、およびサマリーを入力してから、[マップの保存] をクリックします。
- [共有] をクリックして、マップを共有するグループの横にあるチェックボックスをオンにします。要求された場合、フィーチャ サービスもグループと共有します。
マップは [マイ コンテンツ] に保存され、指定したグループで共有されます。
次に、オフラインでのマップの使用を有効化します。
- マップのアイテム詳細を開きます。
- Map Viewerで、[ホーム] > [マイ コンテンツ] の順にクリックします。
- Web マップの名前をクリックして、詳細を開きます。
- オフラインでのマップの使用を有効化します。
- マップの詳細ページで [編集] をクリックします。
- [プロパティ] セクションまで下にスクロールし、[オフライン モードを有効化します] をオンにします。
- [保存] をクリックして、変更内容を適用します。
これで、マップを共有するグループの他のメンバーは、マップをダウンロードしてオフラインで利用できるようになりました。
マップのダウンロード
Web マップが使用可能になると、フィールド スタッフは、Collector for ArcGIS を使用してそのマップをオフラインで利用することができ、その後、現場に移動して要求された更新を調査することができます。これを行うには、フィールド スタッフは Collector を起動して組織サイトにログインする必要があります。新たに共有された Web マップが表示されます。
この Web マップは、オフライン モードが有効化されているため、ダウンロード ボタン付きで Collector に表示されます。フィールド スタッフがダウンロード ボタンをクリックすると、マップをオフラインで利用するプロセスが開始されます。
次にフィールド スタッフは、オフライン マップの範囲とベース マップの解像度を選択します。
ダウンロード プロセスの開始時に、バックエンド ジオデータベース内の公開されたバージョン (デフォルト) から、バージョンが作成されます。オフライン マップごとにバージョンを作成するようにサービスが設定されているため、このバージョン用の一意のバージョン名が生成されます。この名前は、フィールド スタッフのログイン、フィーチャ サービス名、および一意の ID で構成されています。このバージョンは、オフライン マップを同期する際に使用されます。たとえば、フィールド スタッフ Bob がフィーチャ サービス NetFS を含むマップにアクセスした場合、作成されるバージョンの名前は、Bob_NetFS_1404578882000 になります。
注意:
フィーチャ サービスをポータルとフェデレートされていない GIS Server サイトで公開した場合、またはGIS Server の個別のユーザー アカウントを持っていない場合、マップ バージョン名は Esri_Anonymous_<feature service name>_<ID> になります。
次に、データをデバイスにダウンロードします。ダウンロードが完了すると、Collector はローカル データを参照するようにマップを切り替えます。この時点で、ネットワークに接続しなくてもマップを編集できます。Collector のマップ上に同期ボタンが表示され、マップがローカル データを参照していることを示します。
マップを Collector for ArcGIS にダウンロードするには、次の手順に従います。
- モバイル デバイス上の Collector for ArcGIS からポータルに接続し、サイン インします。マップが共有されるグループのメンバーでサイン インする必要があります。
- [ダウンロード] ボタンをタップします (矢印付きの雲)。
- オフラインで操作するマップのエリアにズームします。
- [マップ詳細レベル] をタップし、オフラインで操作する際に表示する詳細レベルまでズームします。
- [ダウンロード] をタップしてオフライン マップを取得します。
フィーチャ サービスは、マップをオフラインで利用するたびにジオデータベース バージョンを作成するように構成されています。そのため、マップを編集のためにオフラインで利用すると、ジオデータベース バージョンが作成されます。作成されるバージョンには、組織サイトのアカウント名、フィーチャ サービス名、および ID 番号が含まれます。
これで、ネットワークに接続できない場合でも、現場でマップを操作し、必要に応じて編集できるようになりました。ネットワークに接続できるようになったときに、編集内容を同期します。
編集内容の同期
フィールド スタッフは、現場にいる間、Collector for ArcGIS からマップを編集します。現場でネットワークに接続できる場合、フィールド スタッフは現場から編集内容を同期することができます。フィールド スタッフは、事務所に戻ったときに、モバイル デバイスから社内ネットワークに接続して最終的な同期を実行します。これによって、現場で行われたすべての修正が各フィールド スタッフのバージョンに確実に適用されます。
自分のデータを編集して同期するには、以下の手順に従います。
- ネットワークから切断されている間、Collector for ArcGIS のマップ上で編集を行います。たとえば、フィーチャの追加、フィーチャの移動、フィーチャ属性の編集などを行います。
- モバイル デバイスを社内ネットワークに再接続し、編集内容を同期します。同期するには、Collector の [マップ ギャラリー] にあるマップ カード上で [同期] をタップします。
- その日の最後の同期の完了後、Collector for ArcGIS からマップを削除します。これを行うには、[マップ ギャラリー] から [管理] 画面を開いてマップを選択し、アイテム カード上で [削除] をタップします。
Collector for ArcGIS からローカル マップを削除すると、マップをオフラインで利用したときに作成されたバージョンは、オフライン マップに関連付けられなくなります。これで、オフライン マップ バージョンからデフォルト バージョンに、変更内容をリコンサイルおよびポストできるようになりました。
変更内容のリコンサイルとポスト
すべての編集内容が同期された後に、各フィールド スタッフは Collector for ArcGIS からローカル マップを削除します。次に、各フィールド スタッフは ArcMap の自分のジオデータベース バージョンに接続し、それをデフォルト バージョンに対してリコンサイルおよびポストします。このとき、競合が検出されて、それを手動で解決する場合があります。
編集内容が保存され、各フィールド スタッフがデフォルト バージョンに切り替えた後に、オフライン バージョンを削除できます。
ヒント:
フィールド スタッフに手動でバージョンのリコンサイル、ポスト、および削除を行わせたくない場合は、このワークフローを自動化できます。「同期が有効化されたデータのリコンサイル操作およびポスト操作の自動化」をご参照ください。
フィールド スタッフは、事務所で編集内容を詳細に確認した際に、もう一度現場に戻ることが必要になる場合があります。現場に戻るたびに、新しいオフライン マップと新しいオフライン バージョンが生成されます。新しい各バージョンには、デフォルト バージョンからの最新の編集内容が含まれることになります。それらのバージョンは、オフライン マップとの関連付けが解除され、リコンサイル、ポスト、および削除されるまで、ジオデータベース内に残ります。
- ArcMap を起動して、ソース ジオデータベースに接続します。
- オフラインの間に編集したデータをマップに追加します。
- [コンテンツ] ウィンドウの [ソース別にリスト] ボタンをクリックします。
- デフォルト バージョンを右クリックし、[バージョンの変更] をクリックします。
- [バージョンの変更] ダイアログ ボックスの [トランザクション] タブで、マップをオフラインで利用したときに作成されたバージョンを選択します。バージョン名が、自分のアカウント名 + フィーチャ サービス名 + ID であることに注意してください。
- [OK] をクリックします。
これで、データがオフライン バージョンで表示されます。
- 必要に応じて、編集内容をリコンサイルし、競合を解決します。
- 変更内容をデフォルト バージョンにポストします。
- ArcMap からデータを削除します。
すべての編集内容がデフォルト バージョンにポストされた後に、フィールド スタッフは自分のバージョンを削除できます。
- カタログ ツリーでソース ジオデータベースを右クリックします。
- [管理] をポイントして、[ジオデータベースの管理] をクリックします。
- [ジオデータベース管理] ダイアログ ボックスの [バージョン] タブにあるリスト内のオフライン バージョンを右クリックし、[バージョンの削除] をクリックします。
ジオデータベースの圧縮
すべてのバージョン対応ジオデータベースは、定期的に圧縮して、バージョンとバージョン対応の編集を追跡するシステム テーブルから不要なステートと行を削除する必要があります。この操作は、ジオデータベース管理者が実行します。ジオデータベース管理者は、ArcGIS Desktop から圧縮操作を実行するか、通常は自動化されたリコンサイル操作およびポスト操作の一部として、圧縮操作を自動化することができます。