ArcGIS Enterprise 配置を 11.4 にアップグレードした後は、オブジェクト ストアを配置に追加し、ホスト シーン レイヤー キャッシュをオブジェクト ストアに移行することをおすすめします。 移行すると、キャッシュは ArcGIS Data Store のタイル キャッシュ データ ストアからオブジェクト ストアに移動します。
MigrateSceneServices ユーティリティを使用すると、移行する前にサービスとキャッシュに関する情報を収集できます。 これには、シーン サービスの名前やキャッシュのサイズなどがあります。 移行する必要がある対象を特定したら、MigrateSceneServices ユーティリティを使用して、すべてのホスト シーン レイヤー キャッシュの一括移行を自動化したり、一度に移行するサービス名のリストを指定したりできます。 たとえば、非常に大きなキャッシュが 1 ~ 2 つある場合は、移行に時間がかかるため夜間に移行できます。 それらの移行が完了し、そのホスト シーン レイヤーをテストした後に、ユーティリティをもう一度実行して、残りのホスト シーン レイヤー キャッシュを移行します。
移行時に、ユーティリティはホスト シーン レイヤーごとに次の処理を実行します。
- キャッシュをオブジェクト ストアにコピーします。
- そのレイヤーのキャッシュは、オブジェクト ストアにコピーされた後にタイル キャッシュ データ ストアから削除されます。
つまり、シーン レイヤーのキャッシュが両方のデータ ストアに存在する期間が存在します。 タイル キャッシュ データ ストアとオブジェクト ストアが同じコンピューター上にある場合は (この配置はおすすめしません)、この一時的なディスク容量の増加要件を考慮する必要があります。
ArcGIS Data Store のオブジェクト ストアに移行するキャッシュは、タイル キャッシュ データ ストアのコンピューター上で使用していたのとほぼ同じディスク容量をオブジェクト ストアで使用します。
注意:
また、ArcGIS Enterprise 組織の管理者またはホスト シーン レイヤーの所有者は、ポータル内のシーン レイヤーのアイテム ページから個々のホスト シーン レイヤーを移行することもできます。 手順については、「シーン レイヤーの管理」をご参照ください。
いずれの方法を使用する場合も、レイヤーのキャッシュを移行する際は、タイル キャッシュ データ ストアおよびオブジェクト ストアのコンピューターで大量の CPU を消費します。
ホスト シーン レイヤーを移行する理由
ArcGIS Data Store タイル キャッシュ データ ストアは 11.4 で非推奨になりました。 タイル キャッシュ データ ストアのサポートは、今後のリリースで終了する予定です。 このため、ホスト シーン レイヤー キャッシュをシステム オブジェクト ストアに移行することをおすすめします。
移行の前提条件
ホスト シーン レイヤー キャッシュを移行する前に、次の手順を実行する必要があります。
- ArcGIS Enterprise 配置を 11.4 にアップグレードします。
- ArcGIS Enterprise 配置にオブジェクト ストアがまだ構成されていない場合は構成する必要があります。
シーン レイヤー キャッシュの移行を開始する前に、バックアップを作成しておくことを強くおすすめします。 バックアップを作成する方法については、「ArcGIS Enterprise のバックアップ」および「backupdatastore ユーティリティ」リファレンスをご参照ください。
MigrateSceneServices ユーティリティのパラメーターと構文
MigrateSceneServices ユーティリティを実行する構文は次のとおりです。
MigrateSceneServices.bat -m <analysis | execution> -s <hosting server URL> -u <administrator username> -p <administrator password> [-t <portal token>] [-r <token referrer>] [--select <list of services to migrate>] [-o <directory>] [-l <log level>] [--num-threads <threads to use>]
各パラメーターの説明を次に示します。
パラメーター | 説明 |
---|---|
-m, --mode | 2 つのモードがサポートされています。
|
-s, --server_url | ホスティング サーバー サイトの URL を指定します。 |
-u, --username | ログインのユーザー名に、このホスティング サーバー サイトに関連付けられている ArcGIS Enterprise ポータルのデフォルト管理者ロールのメンバーを指定します。 |
-p, --password | -u パラメーターで指定した管理者アカウントのパスワードを入力します。 |
-r, --referrer | ポータル トークンのリファラー。 これを使用すると、使用をさらに制限し、サービスにアクセスできる特定の参照元 URL または IP を指定できます。 たとえば、ArcGIS Enterprise 組織サイトの URL に制限できます。 |
-t, --token | ユーザー名とパスワードの代わりに、トークンを生成して使用できます。 トークンが指定されると、指定されているユーザー名またはパスワードが無効化されます。 リファラーを指定する場合、ポータル トークンを指定する必要があります。 |
--select | このオプションのパラメーターを使用すると、移行するサービスの設定リストを指定できます。 リストは、次の形式を使用する必要があります。 "[servicename1, servicename2, servicename3]" |
-o, --output-dir | このオプションのパラメーターを使用すると、ユーティリティのレポート ファイルが作成されるディレクトリ (ユーティリティを解析モードで実行する場合) またはログ ファイルが作成されるディレクトリ (ユーティリティを実行モードで実行する場合) を指定できます。 定義されていない場合、ユーティリティのレポート ファイルまたはログ ファイルは、ユーティリティを実行するコンピューター上の一時ディレクトリに生成されます。 |
-l, --log_level |
このオプションのパラメーターを使用すると、ユーティリティを実行したときに生成されるログ ファイルに使用するログ レベルを設定できます。 このパラメーターに別の値を指定しない場合、使用するデフォルトのログ レベルは info です。 有効な値は、詳細な順に次のとおりです。
|
--num-threads | 移行に使用されるスレッドのデフォルト数をオーバーライドします。 使用されるスレッドのデフォルト数は 16 です。 キャッシュの移行中に CPU 使用率が 100% になり、移行が失敗するか完了できない場合は、ユーティリティが使用するスレッド数を減らしてください。 この設定を変更する場合は、スレッド数をコンピューターのコア数に設定することをおすすめします。 たとえば、コンピューターのコアが 4 つの場合、--num-threads を「4」に設定します。 |
-h, --help | このパラメーターを使用すると、ユーティリティの構文が返されます。 |
ユーティリティの実行
MigrateSceneServices ユーティリティは ArcGIS Server コンピューターの <ArcGIS Server installation directory>\tools\MigrateSceneServices フォルダーにインストールされています。
ArcGIS Enterprise ポータルのホスティング サーバー内にあるいずれかのコンピューターからユーティリティを実行する必要があります。
MigrateSceneServices ユーティリティをどちらのモードで実行しても、ログ ファイルが生成されます。 どちらのモードでも、移行の対象となっているサービス (シーン レイヤー) の数が表示されます。
ユーティリティを解析モードで実行したときに生成されるレポートには、各キャッシュのサイズが記されます。
ヒント:
オブジェクト ストアがタイル キャッシュ データ ストアと同じコンピューター上で実行されている場合は、最大のキャッシュ サイズを特定します。 移行中に、オブジェクト ストアにキャッシュが作成されてもタイル キャッシュ データ ストアからまだ削除されていない短い期間が発生するため、データ ストアのコンピューターに、この最大キャッシュの少なくとも 2 倍のサイズに対応できる十分なディスク空き容量があることを確認します。
execution モードでは、移行処理に関連するログ エントリが表示されるだけでなく、移行されたサービスの数も表示されます。
このユーティリティにアクセスして実行するには、次の手順に従います。
- ArcGIS Server アカウント ログインを使用するか、すべての ArcGIS Server ディレクトリに対する読み取り権限を持つログインを使用し、ホスティング サーバー サイト内のいずれかのコンピューターにサイン インします。
- コマンド ウィンドウを開き、上記の tools ディレクトリに変更します。
- MigrateSceneServices ユーティリティを解析モードで実行します。
次の例では、ユーティリティが解析モードで実行され、ログ ファイルが analysislogs という名前のディレクトリに書き込まれます。
MigrateSceneServices.bat -m analysis -s https://hostingserver.example.com/waname -u portaladmin -p L00kAway! -o c:\\analysislogs
- ユーティリティを解析モードで実行して生成されたレポートに、配置が移行を許可するよう構成され、移行するシーン レイヤー キャッシュが存在することが記されている場合は、ユーティリティを実行モードで実行します。
次の例では、すべてのシーン レイヤー キャッシュを移行します。
MigrateSceneServices.bat -m execution -s https://hostingserver.example.com/waname -u portaladmin -p L00kAway! -o c:\\migrationlogs -l error
- すべてのシーン レイヤー キャッシュが移行およびテストされたら、ユーティリティを解析モードで最後にもう一度実行して、移行する必要があるキャッシュが残っていないことを確認します。
使用例
管理者がオブジェクト ストアを構成した後に、ArcGIS Server 管理者は MigrateSceneServices ユーティリティを解析モードで実行して、移行する必要があるシーン サービスを特定します。
ArcGIS Server 管理者は、ホスティング サーバーとして使用されている ArcGIS Server サイト内のいずれかのコンピューターにサイン インします。 管理者は、ArcGIS Server Microsoft Windows サービスを実行するログインを使用します。
管理者はコマンド ウィンドウを開き、tools ディレクトリにアクセスし、解析モードでコマンドを実行します。 レポートを同僚と共有するため、管理者は出力場所となる共有ディレクトリを指定します。
cd C:\\Program Files\arcgis\server\tools\MigrateSceneServices
MigrateSceneServices.bat -m analysis -s https://hostingserver.example.com/hserver -r https://webadaptorhost.example.com/webadaptor/admin -t abcdefg1234567 -o \\sharedserver\utiloutput
ユーティリティが実行され、4 つのシーン レイヤーのキャッシュがまだタイル キャッシュ データ ストア内にあり、移行可能であることがわかります。 結果はコマンド ラインに表示され、utiloutput ディレクトリに作成されたレポートにも記されます。 レポートには、sceneservice1、sceneservice2、sceneservice3、sceneservice4 のキャッシュが、まだタイル キャッシュ データ ストアに残っていることが記されています。
レポートには、以下のように、各サービスとそのキャッシュ サイズがリストされています。
{ "mode":"analysis", "messages":[ "INFO: Started: Fri Aug 2 17:19:58 2024", "INFO: Found 4 migratable service(s)", "INFO: Largest service: [sceneservice2] (96459081B / ~(91.99MB)", "INFO: Ended: Fri Aug 2 17:20:01 2024" ], "services":[ { "sceneservice1":{ "messages":[ "INFO: size: (48887B / ~5.1MB)" ] }, "sceneservice2":{ "messages":[ "INFO: size: (96459081B / ~91.99MB)" ] }, "sceneservice3":{ "messages":[ "INFO: size: (722299B / ~11.37MB)" ] }, "sceneservice4":{ "messages":[ "INFO: size: (61005191B / ~70.11MB)" ] } } ] }
GIS スタッフ メンバーは、共有場所に書き込まれたレポートを確認し、移行が行われる前にそれぞれのシーン レイヤーを確認します。 これにより、移行前と移行後のレイヤーのコンテンツとパフォーマンスを比較できます。 sceneservice3 には、アクティブに編集されている関連フィーチャ サービスがあることがわかりました。 そのため、編集者が作業を完了するまで、sceneservice3 は移行されません。
ArcGIS Server 管理者は MigrateSceneServices ユーティリティを実行して、他の 3 つのシーン レイヤー キャッシュを移動します。
MigrateSceneServices.bat -m execution -s https://hostingserver.example.com/hserver -r https://fully.qualified.domain:6443/arcgis/admin -t abcdefg1234567 -f [sceneservice1,sceneservice2,sceneservice4] -o \\sharedserver\utiloutput -l debug
ユーティリティが完了すると、対象となっている各シーン レイヤーのキャッシュが移行されています。 ArcGIS Server 管理者は、MigrateSceneServices ユーティリティを解析モードでもう一度実行して、移行する必要のあるシーン レイヤー キャッシュがもうないことを確認します。
移行されたすべてのシーン レイヤーがテストされ、機能することが確認されたら、ArcGIS Data Store 管理者は disabledatastoreユーティリティを実行して、タイル キャッシュ データ ストアをホスティング サーバーから登録解除し、そのすべてのコンテンツを削除します。