クラウドのデータベースには、基本的に、クラウドの仮想コンピューターにインストールされたデータベースと、Database-as-a-Service 製品として提供されるデータベースの 2 つのタイプがあります。
クラウドの仮想コンピューターにインストールされたデータベースを使用する場合は、データベースがインストールされている仮想コンピューターへのアクセス権が必要であり、多くの場合はデータベースのメンテナンスを担当する必要があります。 仮想コンピューターにデータベースをインストールした場合でも、あるいはイメージを使用してデータベースのインストールを含むインスタンスを起動した場合でも同様です。 このようなデータベースについても、自分でほとんどのメンテナンス タスクを行う必要があります。
これが、Database-as-a-Service 製品と異なる点です。 サービスとしてのデータベースおよびデータ ウェアハウスの場合、データベースまたはデータ ウェアハウスにサービスを提供しているコンピューターへのアクセス権はなく、データベース、データ ウェアハウス、またはオペレーティング システムにセキュリティ パッチを適用するなどのメンテナンス タスクを実行する必要はありません。 しかし、サービス プロバイダーが導入する機能の変更を制御できないことが多いことも意味します。 たとえば、オプションのサポートがなくなったり、使用している既存のオプションの動作が変更されたりした場合、プロバイダーが最新情報をプッシュ通知した時点でその変更が有効になります。
ArcGIS ソフトウェアからクラウドのデータベースまたはデータ ウェアハウスへの接続は、同じクラウドにあるコンピューターから行います。 最高のパフォーマンスを得るには、同じクラウド リージョン内のコンピューターから接続されている必要があります。 ほとんどのケースでは、オンプレミスにインストールされた ArcGIS クライアントからクラウドのデータベースまたはデータ ウェアハウスに接続したり、クラウドの ArcGIS クライアントからオンプレミスのデータベースまたはデータ ウェアハウスに接続したり、クラウド リージョンが異なるクライアントとデータベースまたはデータ ウェアハウスとの間で接続したりすると、接続と検索のパフォーマンスは低下します。 そうしたシナリオでは、データベースへの接続がタイム アウトすることもあります。
クラウドにインストールされたデータベースのサポート
クラウド プラットフォームが ArcGIS に対応しているかどうかを確認するには、クラウドの仮想コンピューターの仕様を把握しておく必要があります。 クラウド プラットフォームで提供される仮想コンピューターが、インストールする ArcGIS クライアントやデータベースのオペレーティング システム要件とシステム仕様要件を満たしていれば、ArcGIS がサポートするデータベースでクラウド プラットフォームを使用できます。
これらの仮想コンピューターのサポートは、仮想コンピューターが同じ仕様を持つオンプレミスの物理コンピューターと同じように動作することを前提にしています。 ほとんどの場合、Esri サポートは、クラウド仮想コンピューターと同じ仕様を持つオンプレミスのコンピューターを使用して問題の再現を試みます。
さらに、Oracle Base Database Service は ArcGIS での使用が認定されています。
サポートされるクラウドベースのデータベース サービス
Esri は、ArcGIS Enterprise ソフトウェア、ArcGIS Desktop ソフトウェア、およびサポートされる多くの Database-as-a-Service 製品を Amazon Web Services (AWS) と Microsoft Azure に配置するためのツールを提供しています。 これら 2 つのクラウド プラットフォーム上にデプロイする場合は、これらの専用ツールと Esri イメージを使用して、デプロイメントおよびテクニカル サポートを簡略化することをおすすめします。 Esri が特殊な配置ツールを提供しないクラウド プラットフォームでは、サポートはオンプレミスで再現可能な ArcGIS ソフトウェア固有のトラブルシューティングに限られます。
ArcGIS では、次の Database-as-a-Service 製品がサポートされています。 マイナー バージョンがリストされている場合、それらのバージョンは、サポートされている最小のマイナー バージョンです。
以下のリンクをクリックすると、クラウド ベンダーが提供する外部ドキュメントのページが開きます。
- Amazon Aurora (PostgreSQL-compatible edition) バージョン 13.18、14.15、15.10、16.6
AWS は互換性のある PostGIS バージョンをインストールします。
- Amazon Relational Database Service (RDS) for Oracle
- Amazon RDS for PostgreSQL バージョン 13.20、14.17、15.12、16.8
これらのサポートされている Amazon RDS for PostgreSQL のバージョンごとに、ArcGIS は Amazon Web Services でサポートされている PostGIS バージョンをサポートしています。
- Amazon RDS for SQL Server バージョン 2017、2019、および 2022
- Google Cloud SQL for PostgreSQL 13.18、14.15、15.10、16.6
これらのサポートされている Google Cloud SQL for PostgreSQL のバージョンごとに、ArcGIS は Google Cloud でサポートされている PostGIS バージョンをサポートしています。
- Google Cloud SQL for SQL Server 2017、2019、および 2022
- Microsoft Azure Database for PostgreSQL (フレキシブル サーバー) 13.18、14.15、15.10、16.6、Microsoft Azure Cosmos DB for PostgreSQL バージョン 13.15、14.12、15.7、16.3
これらのサポートされている Microsoft Azure Database for PostgreSQL のバージョンごとに、ArcGIS は Microsoft Azure でサポートされている PostGIS バージョンをサポートしています。
- Microsoft Azure SQL Database または Microsoft Azure SQL Managed Instance バージョン 12
- Oracle Autonomous Database - Autonomous Data Warehouse と Autonomous Transaction Processing
- SAP HANA Cloud
ジオプロセシング ツールは、ジオプロセシング ツールの使用方法で別途明記されている場合を除き、同等の Database-as-a-Service 製品でサポートされています。 たとえば、ツールの使用方法に、ツールが PostgreSQL でサポートされていることが示されている場合は、ツールの使用方法でサポートされていないことが明記されていない限りは、Amazon RDS for PostgreSQL、Aurora PostgreSQL、Azure Database for PostgreSQL、Google Cloud SQL for PostgreSQL で使用できます。
制限事項
ArcGIS ソフトウェアで Database-as-a-Service 製品を使用する場合は、次の制限事項にご注意ください。
- ジオデータベースは Microsoft Azure Cosmos DB for PostgreSQL ではサポートされていません。
- ST_Geometry ライブラリーは DBaaS 製品に読み込めないので、Amazon Aurora (PostgreSQL-compatible edition)、Amazon RDS for PostgreSQL、Google Cloud SQL for PostgreSQL、Microsoft Azure Database for PostgreSQL (すべてのオプション) を使用する場合には PostGIS 空間タイプのみがサポートされ、Amazon RDS for Oracle または Autonomous Transaction Processing を使用する場合には SDO_Geometry 空間タイプのみがサポートされます。
- Amazon RDS for Oracle または Autonomous Transaction Processing のジオデータベースには GDB_UTIL.get_extent()、GDB_UTIL.geometry_type、GDB_UTIL.spatial_ref_info() 関数は存在しません。
- Amazon RDS for Oracle は ArcGIS Enterprise on Amazon Web Services 配置ツールに含まれていません。代わりに AWS ツールを使用して Amazon RDS for Oracle インスタンスを作成してください。
- データベースを作成するために Esri クラウド配置ツールを使用していないか使用できず、サポートされる上記の Database-as-a-Service 製品でジオデータベースを作成したい場合には、[エンタープライズ ジオデータベースの有効化 (Enable Enterprise Geodatabase)] ジオプロセシング ツールを使用してジオデータベースを作成する必要があります。 [エンタープライズ ジオデータベースの作成 (Create Enterprise Geodatabase)] ツールは使用しないでください。
- Amazon RDS for SQL Server、Google Cloud SQL for SQL Server、Microsoft Azure SQL Database、または Microsoft Azure SQL Managed Instance でジオデータベースを作成する場合は、sde スキーマ ジオデータベースのみがサポートされています。
- ArcGIS クライアントからほとんどの Database-as-a-Service 製品へのオペレーティング システム認証接続は、サポートされていません。 Microsoft Entra ID オプションは、Azure SQL Database または Azure SQL Managed Instance に接続している場合に使用できます。
- SAP HANA Cloud インスタンスにジオデータベースが含まれている場合、ユーザーを接続するには EXECUTE ON ACQUIRE_APPLICATION_LOCK 権限と EXECUTE ON RELEASE_APPLICATION_LOCK 権限が必要です。 特定のタスクに対して必要な権限の詳細については、「SAP HANA でのジオデータベースの権限」をご参照ください。
- すべてのサービス製品と同様に、Database-as-a-Service プロバイダーは、マイナー リリースであっても、製品の設定や機能を変更することができます。 ArcGIS でサービスとしてのデータベースを使用する場合、サービス プロバイダーによるこれらの変更が、ArcGIS からデータベースへのアクセスに悪影響を与える可能性があることを了承するものとします。 Esri では、これらの変更による ArcGIS ソフトウェアの問題をパッチで対処する予定です。 ただし、このような問題の解決に要する時間は、状況によって評価されます。
サポートされるクラウド データ ウェアハウス
クラウド データ ウェアハウスは、Database-as-a-Service 製品に類似しており、ベンダーが管理および更新するデータ ウェアハウスが、ベンダーによって提供されます。 クラウド環境でホストされる次のデータ ウェアハウスが、ArcGIS でサポートされます。
ジオデータベースは、上記のクラウド データ ウェアハウスではサポートされていません。
データベースまたはデータ ウェアハウスへの接続に必要なソフトウェア
データベース クライアント ソフトウェアを使うと、クライアント アプリケーションと、クライアントが接続するデータベースまたはデータ ウェアハウス間で通信することが可能になります。
クラウドの仮想コンピューターに ArcGIS クライアントをインストールしたり、前述の「サポートされているクラウドベースのデータベース サービス」セクションにリストされていないデータベースに接続したりする場合には、ArcGIS クライアント コンピューターにデータベース管理システムのクライアント ファイルをインストールする必要があります。 これらのクライアント ファイルは、それぞれのデータベース ベンダーから入手できます。 ベンダーの指示に従ってファイルのインストールと構成を行ってください。また。ArcGIS クライアントから接続する際に必要な追加構成については、ArcGIS ヘルプの接続情報をご参照ください。
ほとんどの場合、アクセスする必要のあるデータベース、サービスとしてのデータベース、クラウド データ ウェアハウスのバージョンでサポートされている最新のデータベース クライアント ソフトウェアをインストールします。 このガイドラインには、次の追加要件または例外があります。
- ArcGIS から SAP HANA Cloud に接続するために必要な SAP HANA ODBC クライアントの最小バージョンは 2.15.17 です。 SAP HANA Cloud を配置した場所のできるだけ近くにある (物理または仮想) コンピューター上に、ArcGIS クライアントをインストールしてください。
- Microsoft Azure SQL Database または Microsoft Azure SQL Managed Instance に接続するには、少なくとも Microsoft によってサポートされる ODBC の最低バージョンを使用します。
- ArcGIS から BigQuery に接続するには、Magnitude Simba ODBC ドライバー バージョン 3.1.2.1004 以降をインストールします。
- キーペア認証を使用し、ArcGIS から Snowflake に接続するには、Snowflake ODBC ドライバー バージョン 3.4.0 以降をインストールします。
以下のシナリオでは、データベース クライアントはユーザーに提供されるため、インストールや構成は必要ありません。
- Esri が提供する Azure イメージを使用して ArcGIS Enterprise と ArcGIS Pro をデプロイする場合、必要なデータベース クライアントはインストールされているので、Azure でサポートされている Database-as-a-Service 製品にアクセスできます。 同様に、ArcGIS Enterprise on Amazon Web Services 配置ツールを使用する場合、データベース クライアントはインストールされているので、サポートされている Amazon RDS 製品にアクセスできます。
- ArcGIS Enterprise on Kubernetes には、サポートしているデータベースとクラウド データ ウェアハウスに接続するためのクライアント ファイルが含まれています。