ArcGIS Data Store 11.5 に影響を与える技術面の変更には、グラフ ストア モードの変更とタイル キャッシュ データ ストアの廃止が含まれます。 これらの変更と ArcGIS Data Store の追加機能または機能変更については、以降のセクションで説明します。
11.5 はタイル キャッシュ データ ストアがサポートされる最後のリリースです
ArcGIS Data Store 11.5 はタイル キャッシュ データ ストアがサポートされる最後のリリースです。 このため、次のことが当てはまります。
- タイル キャッシュ データ ストアを含む ArcGIS Enterprise 11.4 以前のデプロイメントを 11.5 にアップグレードすると、タイル キャッシュ データ ストアもアップグレードされます。 データ ストア構成ウィザードではなく、configuredatastore ユーティリティーを使用してアップグレードを完了します。 アップグレード後も、既存のホスト シーン レイヤーは引き続き機能します。
- 11.5 は、既存のホスト シーン レイヤー キャッシュをオブジェクト ストアに移行できる最後のリリースです。
ホスティング サーバーの管理者は、ArcGIS Server とともにインストールされた MigrateSceneService ユーティリティーを実行し、ホスト シーン レイヤー キャッシュをオブジェクト ストアに移動できます。
注意:
組織にホスト シーン レイヤーが含まれる場合、11.5 にアップグレードし、ホスト シーン レイヤー キャッシュをオブジェクト ストアに移行することをおすすめします。 MigrateSceneService ユーティリティーとホスト シーン レイヤーを格納するオブジェクト ストア機能は、11.4 と 11.5 にのみ存在します。 このため、維持する必要があるホスト シーン レイヤーが存在する場合に、今後の ArcGIS Enterprise リリースにアップグレードするには、まず 11.5 にアップグレードし、キャッシュ移行プロセスを完了する必要があります。
- ArcGIS Enterprise 11.5 デプロイメントでホスト シーン レイヤーを公開または移行するには、オブジェクト ストアを構成する必要があります。
グラフ ストアへの変更
11.5 のグラフ ストアに関連する次の 2 つの変更点を念頭に置いてください。
- サポートされるデプロイメント モードが変更されました。
- グラフ ストア コンピューターの容量は、ArcGIS Knowledge Server ライセンスの条項に紐付いています。
グラフ ストア モード
グラフ ストアの基盤となる技術で、プライマリー/スタンバイ モードがサポートされなくなりました。 このため、グラフ ストアを 1 台のコンピューターまたは 11.5 で始まる 3 台のコンピューターのクラスター モードでデプロイする必要があります。
3 台のコンピューターのクラスター モードに移行することで、クラスター内の 3 台のコンピューターすべてが実際に検索を受け付けるため、検索能力も向上します。 このように、プライマリ コンピューターのみが検索を受け付けていたプライマリ/スタンバイ モードからの改善がなされています。
グラフ ストアを 11.5 にアップグレードすると、グラフ ストアが単一コンピューター モードになります。 詳細は、以下の「アップグレード セクション」をご参照ください。
グラフ ストアは、ArcGIS Knowledge Server ライセンスに紐付いています。
グラフ ストアは ArcGIS Knowledge Server でのみ使用されます。 このため、ArcGIS Knowledge Server 用に購入するライセンスによって、グラフ ストアをインストールするコンピューターのコア容量が決まります。 詳細については、「ArcGIS Knowledge Server の製品販売の更新」をご参照ください。
ArcGIS Data Store のアップグレード
以下で説明する変更は、ArcGIS Data Store のアップグレードに影響を及ぼします。
直接アップグレートに対応しているバージョン
ArcGIS Data Store 10.8 以降から ArcGIS Data Store 11.5 にアップグレードできます。
バージョン 10.7.1 以前からアップグレードするには、以下に示すとおりまず中間バージョンにアップグレードしてから、そのバージョンを 11.5 にアップグレードします。 中間アップグレードを行うための中間バージョンについては、アップグレードのドキュメントをご参照ください。
| 開始バージョン | 中間バージョン |
|---|---|
10.7 または 10.7.1 | 10.8.0 – 11.3 |
10.6.1 以前 | 10.8.0 – 10.9.1 |
アップグレード後、まだオブジェクト ストアを ArcGIS Enterprise デプロイメントに登録していない場合は、オブジェクト ストアを構成します。 これにより、組織のメンバーがホスト シーン レイヤーと 3D タイル レイヤーを公開できるようになります。 詳細については、次の 2 つのセクションをご参照ください。
グラフ ストアのアップグレード
既存のグラフ ストアに 1 台のコンピューターが含まれている場合は、アップグレード手順に変更はありません。
ただし、デプロイメント内のグラフ ストアに 2 台のコンピューターが含まれている場合は、アップグレード手順が以前のリリースから変更されています。
- コンピューターのうち 1 台のみをアップグレードする必要があります。 これを行うと、アップグレードされたコンピューターが単一インスタンス モードになり、もう 1 台のコンピューターがホスティング サーバーから登録解除されます。
- 引き続き高可用性が必要な場合は、デプロイメント内のグラフ ストア コンピューターのうち 1 台と他のすべての ArcGIS Data Store タイプをアップグレードします。 次に、デフォルトのバックアップ場所がグラフ ストア用に構成されていることを確認します。これが確認できたら、configuredatastore ユーティリティーを使用して、2 台のコンピューターをグラフ ストアに追加し、クラスターを作成できます。
アップグレード後の作業を含め、「ArcGIS Data Store 11.5 へのアップグレード」の指示に従ってください。
クラスター モードでデプロイされたグラフ ストアでは、クラスター内のコンピューター間の通信に TCP ポート 9830 を利用できる必要があることにも注意してください。 各種の ArcGIS Data Store に必要なポートの全一覧については、「ArcGIS Data Store で使用されるポート」をご参照ください。
タイル キャッシュ データ ストアのアップグレード
前述のとおり、タイル キャッシュ データ ストアを 11.5 にアップグレードしても、既存のホスト シーン レイヤーは機能し続けます。 ただし、これはタイル キャッシュ データ ストアをサポートする最後のリリースであるため、組織内にホスト シーン レイヤーがある場合は、ホスト シーン レイヤーのキャッシュをオブジェクト ストアに移行する必要があります。 すべてのキャッシュを移行して、ホスト シーン レイヤーを試験したら、タイル キャッシュ データ ストアを無効化できます。 これを行うまでは、デプロイメントを 11.5 より後のバージョンにアップグレードできません。
11.5 におけるポートの変更
11.5 から、コンピューター間の通信用に、TCP ポート 9820 と 9850 を ArcGIS Data Store のリレーショナル データ ストア コンピューターで準備する必要があります。 また、ホスティング サーバーがリレーショナル データ ストア コンピューターのシステム データベースと通信できるよう、ポート 9840 をリレーショナル データ ストア コンピューターで準備する必要もあります。
以下のポートは、オブジェクト ストア コンピューターでは必要なくなります。
- TCP ポート 9840、9830、および 9820
- HTTP ポート 9880、29882、29878、29876、および 29874
- HTTPS ポート 29883、29877、および 29875
各種の ArcGIS Data Store に必要なポートの全一覧については、「ArcGIS Data Store で使用されるポート」をご参照ください。
オブジェクト ストアは、ArcGIS Enterprise の基本デプロイメントの一部です。
ArcGIS Enterprise 組織のメンバーがホスト シーン レイヤーを公開するかホスト 3D Tiles レイヤーを公開する前に、オブジェクト ストアを構成する必要があります。 ArcGIS Enterprise デプロイメントにすでに ArcGIS Data Store オブジェクト ストアが含まれている場合、このオブジェクト ストアは、組織のメンバーがこれらのレイヤーを公開するときに、これらのレイヤーのキャッシュを保存するために使用されます。
ArcGIS Data Store オブジェクト ストアの既存のコンピューターの容量を評価します。 組織のメンバーが大規模な 3D Tiles レイヤーまたはシーン レイヤー、あるいは多数の 3D Tiles レイヤーまたはシーン レイヤーを公開する際に、オブジェクト ストア コンピューターが単一インスタンス モードで配置されていた場合は、そのコンピューターにディスク容量を追加することをご検討ください。 オブジェクト ストアがクラスター モードで配置されていた場合は、既存のコンピューターにディスク容量を追加するか、オブジェクト ストアにコンピューターを追加して、追加のデータ ストレージ ニーズを考慮することができます。
ArcGIS Data Store ユーティリティーへの変更と追加
ArcGIS Data Store ユーティリティーの変更点と追加機能は以下のとおりです。
- configuredatastore - このリリースにおけるグラフ ストアの変更の一環として、グラフ ストアのモードを単一インスタンスからクラスターに変更できるよう、--mode の操作が拡張されています。
- describedatastore - グラフ ストア モードの変更の結果、グラフ ストアについて報告されるプロパティに対し複数の変更がなされています。
- グラフ ストアについて報告される有効モード値は、[単一インスタンス] または [クラスター] となりました。
- [最終フェイルオーバー] プロパティは、単一インスタンス モードまたはクラスター モードで動作するデータ ストアには関係ないため、グラフ ストアについては返されなくなりました。
- [クラスターが完成しているかどうか] プロパティが追加されました。 これは、グラフ ストア クラスター用に第 3 のコンピューターが構成されている場合のみ true に設定されます。それまでは、false に設定されています。
- [削除されるコンピューター] プロパティは、removemachine ユーティリティーの実行時に削除対象に指定されるグラフ ストア コンピューターの名前を報告します。
- removemachine - 前述のとおり、グラフ ストア クラスターから故障したコンピューターを削除するためにこのユーティリティーを実行すると、そのコンピューターが削除対象に指定されます。 故障指定されたコンピューターが実際にクラスターから削除される前に、グラフ ストアを 3 台のコンピューターの構成に戻すため、新しいコンピューターを 1 台追加する必要があります。
修正された問題
ArcGIS Data Store 11.5 に含まれる修正については、「11.5 で対処された問題一覧」をご参照ください。